パキスタンで議会解散、暫定内閣が発足

(パキスタン)

カラチ発

2023年08月30日

パキスタンのシャバス・シャリフ首相(当時)による連邦下院解散(8月9日)にともない、暫定首相候補に、バロチスタン州を基盤とし前内閣と連立を組むバロチスタン民衆党(BAP)所属で上院議員のアンワールル・ハック・カーカル氏が、シャリフ前首相と野党党首の助言によりアリフ・アルビ大統領により任命され、8月14日に暫定首相に就任した。カーカル暫定首相は8月17日、暫定内閣を組閣した(添付資料表参照)。同内閣は、前政権の政策との一貫性継続を重視して、党派に左右されにくい実務家内閣となった。

シャリフ前首相が下院任期満了日である8月12日の前に下院を解散したことから、憲法の規定により、解散から90日以内に総選挙が実施される(任期満了の場合は、解散後60日以内)。ただし、選挙管理委員会(ECP)は、2023年5月に完了した国勢調査の結果を受けた選挙区の区割り見直しに時間がかかるため、2023年内の総選挙実施は困難と示唆している(8月18日「ビジネスレコーダー」紙ほか)。また、シャリフ前首相率いるパキスタン・ムスリム連盟ナワズ派(PML-N)では、パナマ文書に端を発した汚職事件で有罪判決を受け、健康上の理由で2018年からロンドンに滞在している、過去3度首相を務めたナワズ・シャリフ氏を次期首相にするために帰国させようとの動きも表面化しており(8月17日「ドーン」紙)、総選挙が規定期間内には実施されない公算が高まっている。

6月末に当時のパキスタン政府と9カ月間で最大30億ドルのつなぎ融資合意(SBA)をしたIMF(2023年7月6日記事参照)は、暫定政権とはSBA後の新融資プログラムの交渉はしないと明言しており、総選挙が遅れた場合はIMFとの交渉再開が遅れ、再び外貨不足に陥る可能性がある。次の政権へのつなぎとして発足した暫定内閣はその性格上、独自政策の実施や国際機関などとの新たな交渉はしにくいため、総選挙の遅れは経済の停滞を長引かせる恐れがある。

(山口和紀)

(パキスタン)

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