IMF、パキスタン政府と30億ドルの追加融資で合意

(パキスタン)

カラチ発

2023年07月06日

IMF629日、今後9カ月にわたり30億ドルの追加融資を行うスタンドバイ取り決め(Stand-By ArrangementSBA)について、パキスタン政府と実務レベルで合意したと発表した。7月半ばに開催される理事会で正式決定される見通し。パキスタン政府は、IMFの融資プログラムの拡大信用供与措置(EFF)第9次レビューについて、630日の失効を前に実務レベル合意を得られなかったが、かろうじてつなぎ融資を獲得した格好だ(2023年6月29日記事参照)。これを受け、シャバズ・シャリフ首相は30日にツイッターで「この取り決めで外貨準備が強化され、経済が安定化するだろう」と期待を示した。

SBAは、IMF加盟国が国際収支問題に直面した際に供与される短期的な財政支援。IMFは今後設定した政策目標の達成度合いを定量的に審査し、パキスタン政府に対し段階的に融資を実行する予定。

IMFのネーサン・ポーター氏は声明で、SBAはパキスタン経済の安定化と、国際機関や友好国からの融資獲得に努力するパキスタン政府をサポートするだろうと述べた。また、政府の迅速な政策実施がカギになるとして、中でも財政規律の維持と、市場メカニズムによる為替レートの決定、構造改革への取り組み(特に債務が累積する電力部門)の重要性を挙げた。また、10月ごろ実施予定の総選挙を念頭に、予算の裏付けのない歳出や免税措置の追加などへの圧力に政府が屈しないことが重要と注文を付けた。

パキスタン中央銀行(SBP)の外貨準備は、輸入1カ月分にも満たない353,600万ドルにまで減少しているが(616日時点)、イスハック・ダール財務相は「政府はSBPの外貨準備を7月末までに140億ドルへ引き上げる」と強気の姿勢を崩していない(「ドーン」紙630日)。

今後は「最後の貸し手」とも言われるIMFの支援を背景に、政府がアジア開発銀行(ADB)やイスラム開発銀行といった国際機関や、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、中国といった友好国からさらなる融資、預金、債務繰り延べなどを獲得できるかが焦点となる。

(山口和紀)

(パキスタン)

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