7月の米消費者物価指数、前年同月比3.2%上昇、コア指数は4.7%上昇

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月14日

米国労働省が8月10日に発表した2023年7月の消費者物価指数(CPI)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は、前年同月比3.2%上昇と、前月の3.0%上昇からやや上昇し、市場予測(3.3%上昇)をわずかに下回った。変動の大きいエネルギーと食料品を除いたコア指数は同4.7%上昇で、前月の4.8%上昇からわずかに低下した。前月比ではCPI、コア指数ともに0.2%上昇と、低い伸びにとどまった(添付資料図参照)。

品目別に前年同月比でみると、エネルギーは12.5%下落(前月16.7%下落)と5カ月連続のマイナスになった。うち、ガソリンは19.9%下落(前月26.5%下落)だった。食料品は4.9%上昇(前月5.7%上昇)と12カ月連続で伸びが鈍化した。内訳では、家庭用食品は3.6%上昇(前月4.7%上昇)、外食は7.1%上昇(前月7.7%上昇)と、いずれも伸びが鈍化した(添付資料表参照)。

財は0.8%上昇(前月1.3%上昇)と鈍化し、伸びが約3年ぶりに1%を下回った。内訳をみると、中古車が9カ月連続のマイナスとなる5.6%下落になったほか、新車も3.5%上昇(前月4.1%上昇)と伸びが鈍化した。サービスは6.1%上昇(前月6.2%上昇)と伸びがわずかに鈍化した。物価全体の約3割のウエートを占める住居費は7.7%上昇(前月7.8%上昇)と高水準で、前月比でも0.4%上昇(前月0.4%上昇)と伸びは横ばいだった。この住宅価格の上昇がサービス価格の高い伸びのほとんどを占めており、住宅を除くサービス価格は前年同月比3.3%上昇(前月3.2%上昇)にとどまっている。

金融政策の今後の動向に関して、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)によると、次回9月12~13日に開催される連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)では、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利が約90%の確率で据え置かれる(5.25~5.50%)と予想されている。一方、9月のFOMCまでに、雇用統計とCPIの公表がまだ1回ずつ残っている。今回の結果では、CPIが2カ月連続で3%程度の上昇率となり、鈍化傾向があらためて確認された一方、住居費が高止まりの重しになっており、FRBが掲げる2%の物価目標を達成するためには課題が残されていることも確認された。また、物価とともに金融政策を判断する主要指標の雇用統計(2023年8月7日記事参照)では、新規雇用者数の伸びが2カ月連続で20万人を下回るなど、労働需給逼迫の改善がうかがえる一方、低水準を維持する失業率や高い伸びを続ける平均賃金など、依然として物価上昇の要因となり得るデータも示されている。FRBメンバーの間でも、フィラデルフィア連銀のパトリック・ハーカー総裁が「(FOMCが開催される)9月半ばまでに憂慮すべき新たなデータがなければ、われわれは金利を辛抱強く据え置くことができる」と述べる半面、FRBのミッシェル・ボウマン理事は「インフレ率を目標の2%まで低下させるためには、追加の利上げが必要になるだろう」と述べるなど、見解が分かれている。8月末に行われるジャクソンホール会議(注)で、FRBのジェローム・パウエル議長が今回の結果を踏まえてどのような見解を示すのかに注目だ。

(注)ジャクソンホール会議は、毎年夏に開かれる、カンザスシティー地区連銀主催の経済政策シンポジウム。例年、ワイオミング州ジャクソンホールで開かれ、各国の中央銀行総裁やエコノミストが参加する(2022年8月29日記事参照)。

(加藤翔一)

(米国)

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