イエレン財務長官の訪中、中国特別委は調査対象を拡大、ジェトロの米中月例レポート(2023年7月)

(米国、中国、ベトナム、パプアニューギニア)

調査部米州課

2023年08月24日

ジェトロは8月23日、米国の対中国関連政策についてまとめた2023年7月分の月例レポートを公表した。このレポートは、日本企業が米中関係に関する米国の動向を把握できるよう、2021年7月から毎月分を作成して特集ページに連載している。

米中関係に関する7月の動きの中で注目されるものに、ジャネット・イエレン財務長官の7月6~9日にかけての訪中がある。イエレン長官は、7月7日に開かれた中国の李強首相との会談で、米国側の主張として、公正なルールの下で両国が利益を得られるような経済的競争を追求すること、国家安全保障上必要な場合では的を絞った措置を講じること、を伝えた(2023年7月10日記事参照)。イエレン国務長官はこの訪中で、李強首相だけでなく、何立峰・副首相や潘功勝・中国人民銀行総裁ら政府の幹部と会談し、バイデン政権の基本的な対中姿勢を繰り返し伝えたとみられる。

また、バイデン政権は中国が影響力の強化・維持を図る諸国に、閣僚級の代表を派遣した。7月20~21日に行われた、イエレン長官によるベトナム訪問では、アイン共産党中央経済委員長やフエ国会議長と会談し、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化について協議した。7月25日には、ロイド・オースティン国防長官がパプアニューギニアを訪問し、軍事的支援の強化を強調した。現役米国防長官の同国訪問は初めてであり、2023年5月22日に結ばれた2国間防衛協力協定をもとに、軍事的支援の強化を強調し、同地域への関与を強めていく姿勢を見せた。

米国国内では、米国連邦議会下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」が7月に公聴会を3回開催した。また、同委員会の委員長であるマイク・ギャラガー議員(共和党、ウィスコンシン州)は、バージニア・フォックス議員(共和党、ノースカロライナ州)とともに7月17日、カリフォルニア大学(UC)バークレー校が中国の清華大学と広東省深セン市で運営している共同研究所「清華・バークレー深セン研究所」に対し、安全保障上の懸念があるとして、UCの学長およびバークレー校の校長に調査状を送付した(2023年7月18日記事参照)。ほかにも、同委員会は米国のベンチャーキャピタルの中国企業への投資について調査を開始するなど、同委員会の活動が活発になってきている(2023年7月21日記事参照)。

米国の対中政策・措置や米国側から見た米中関係の動向について、行政府、連邦議会、産業界、学会に分けて解説する月例レポートは、こちらの特集ページからさかのぼって閲覧が可能。米中関係に関する中国の動向も確認できる。

(谷本皓哉)

(米国、中国、ベトナム、パプアニューギニア)

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