商務部、対中投資制限に関する米大統領令への対抗措置を示唆
(中国、米国)
北京発
2023年08月23日
中国商務部は8月17日に定例記者会見を開催し、束珏婷報道官が経済安全保障に関する各報道機関の質問に回答した。
香港系報道機関のフェニックステレビ(鳳凰衛視)は、米国のジョー・バイデン大統領が米国から懸念国への対外投資に関する大統領令に署名したこと(2023年8月14日記事、8月21日記事参照)を受け、「商務部は以前の記者会見で(必要な)措置を講じる権利を留保すると回答したが、どのような措置を検討しているか」と質問した。これに対して、束報道官は、米国の行政命令は対中投資を制限し、他国と自国に不利益をもたらすもので、中国はこれに深刻な懸念を表明すると述べた。その上で、商務部は当該大統領令が企業に与える実際の影響を把握するため、企業との意見交換やそれに基づく包括的評価を実施しており、今後、評価結果に基づく必要な対抗措置を講じる予定と回答した。
大統領令について、中信証券の楊帆マクロ・政策首席アナリストと遥遠海外政策首席アナリストは8月10日の海外政策時評で、関連する制限措置は中国との「対立ではなく競争」というバイデン政権の戦略の表れで、リスクの全体的な影響は制御可能と分析している。また、米中間の継続的な対話という現在の流れが根本的に変わる可能性は少なく、G20やAPEC首脳会議など米中が対話するタイミングでの動向を注目すべきと指摘している。
ガリウムとゲルマニウムの輸出管理の運用動向も紹介
今回の定例記者会見では、米国報道機関のCNBCから、ガリウムとゲルマニウムの輸出管理強化実施後(2023年7月4日記事参照)、商務部は企業などからの輸出申請書類を受理したかとの問いもあった。束報道官は、商務部は一部の企業からガリウムとゲルマニウム関連品目の輸出許可申請を受理しており、現在、法令に基づいて申請内容を審査していると回答した。
CCTVの国際ニュースチャンネルCGTNは、米国で中国が中国企業を米国企業に取って代わらせるために、強制的にあるいは企業買収を通じて米国の技術などの取得をしているとの指摘があるとして、これに対する商務部の見方を尋ねた。束報道官は、企業間の合併や買収を通じて技術や知的財産権を獲得することは通常のビジネス上の協力活動と指摘した上で、中国は強制的な技術移転に対して明確に反対を表明しており、強制的な技術獲得により中国企業が米国企業に取って代わることを支援することはないと回答した。
(亀山達也)
(中国、米国)
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