米運輸省、中国航空会社の米国発着便の倍増を発表

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年08月15日

米国運輸省は8月11日、中国の航空各社による米国発着便の上限を段階的に増加する行政命令を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。現在の週12便から、9月1日から週18便に増やし、最終的に10月29日には現行の2倍となる24便までの運航を許可する。

米国運輸省は2020年6月、中国当局が新型コロナウイルスの感染拡大を理由に停止していた、米国航空会社による中国発着便再開の要請を受け入れなかったことに反発して、一時は中国航空会社による米国発着便を全面停止すると発表していた。その直後に、全面停止を回避し、週2便の発着を許可するにとどめた経緯がある(2020年6月9日記事参照)。それ以降、新型コロナ禍が沈静化に向かうに伴い、両国間で便数の調整を重ね、互いに両国の航空会社による発着便を週12便まで許可するに至っている。ロイター(8月11日)によると、米国運輸省は中国当局も同じ措置をとることに合意すると見通しているという。両国間の航空便の増加については、アントニー・ブリンケン国務長官が6月に訪中し習近平国家主席らと会談した際に、実現に向けた進展を確認した(2023年6月21日記事参照)。米国運輸省の発表前日に当たる8月10日には、中国が米国を含む数カ国への団体旅行に対する規制を撤廃したことを受けて、ジーナ・レモンド商務長官が「米国の観光業にとっての勝利で、2国間関係に不可欠な人的交流を促進する重要な一歩だ」と歓迎する声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。

米国は引き続き、経済安全保障の観点から、半導体や量子情報技術、人工知能(AI)といった重要技術分野について、中国との取引を一部制限する新たな方針を打ち出すなど警戒感を強めている(2023年8月14日記事参照)。一方で、今回のように、リスクのない部分については、中国との関係を改善しようという意図がみえる。新型コロナ禍前には、両国間で約350便が行き交っていた状況と比較すると、合計48便への増加は小さな一歩だが、緊張が続いてきた両国関係において前向きな動きといえよう。

(磯部真一)

(米国、中国)

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