中国、8月5日からオーストラリア産大麦へのアンチダンピング関税と補助金相殺関税を撤廃

(中国、オーストラリア)

調査部中国北アジア課

2023年08月07日

中国商務部は8月4日、国務院関税税則委員会の決定により、オーストラリア産大麦(注)の輸入に課していたアンチダンピング関税と補助金相殺関税の徴収を翌5日から終了するとの公告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。オーストラリア産大麦に対する関税については、商務部が4月14日、徴収を継続する必要性について再調査を開始するとの公告を発表していた(2023年4月18日記事参照)。今回の公告によると、商務部は再調査の結果、中国の大麦市場の状況に変化が発生したため、2つの関税の徴収が既に必要なくなったと裁定した。

中国はオーストラリア産大麦に対して、2018年11月にアンチダンピング調査を、同年12月に反補助金調査を相次いで開始し、調査の結果、2020年5月19日からアンチダンピング関税と補助金相殺関税を徴収していた。アンチダンピング関税率は73.6%、補助金相殺関税率は6.9%とされ、合わせて計80.5%の追加関税が課されていた。

同措置に対して、オーストラリアは中国をWTOに提訴する(2020年12月17日記事参照)など、同問題を巡って両国の摩擦が続いていたが、2022年11月には習近平国家主席とアンソニー・アルバニージー首相(労働党)の首脳会談が行われたほか、同年12月21日には訪中したペニー・ウォン外相と王毅国務委員兼外交部長(当時)が北京で会談し、経済貿易問題を含む6分野の対話の始動・再開に合意する(2022年12月28日記事参照)など、両国の関係改善に向けた動きがみられていた。こうした環境の中、商務部は2023年4月11日の報道官談話で、両国はWTOの枠組みの下でオーストラリア産大麦の措置に関する紛争について友好的な協議を行い、合意に達したと明らかにしていた。

中国国際貿易学会専門家委員会の李永副主任は今回の決定について「中国が措置を発動した2020年にオーストラリアは中国にとって最大の大麦調達先としての地位を失った。措置が撤廃されれば、オーストラリア産大麦の中国市場への輸出は好転すると期待され、双方にとって有益となる」と指摘している(「環球時報」8月4日)。

中国は、大麦のほか、ワインにも2021年3月28日からアンチダンピング関税と補助金相殺関税を徴収しており、オーストラリアはワインについても同様のプロセスによる関税措置の撤廃を求めている(2021年6月22日記事2023年6月9日記事参照)。

(注)該当するHSコードは10031000、10039000。

(小宮昇平)

(中国、オーストラリア)

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