中国共産党の中央対外連絡部部長、イタリアを訪問

(中国、イタリア)

武漢発

2023年07月11日

中国共産党の劉建超中央対外連絡部部長は625日、イタリア訪問中に訪れたミラノで、イタリア経済界の代表者らと会談した。劉氏は、イタリア中国評議会財団とイタリア経済界の関係者が、長期にわたり両国間の戦略面、実務面の協力推進に積極的な役割を果たしてきたことや、両国のみならず、中国とEUとの協力に前向きな姿勢を示してきたことを称賛した。そして、両国の起業家は互恵協力を深めたいという強い願望を持っているとした上で、両国の「一帯一路」構想に関する覚書への署名は正しい判断だったとした。

イタリアの企業関係者も、両国間の「一帯一路」協力の継続を断固支持すると表明した上で、「一帯一路」によってもたらされる巨大なチャンスをつかみ、継続的・建設的な対話と交流を推進することで、両国間の互恵協力を共同で推進し、より実りある成果を達成したいとした。

なお、劉氏は訪問期間中に、イタリアのタヤーニ副首相兼外相やラルッサ上院議長とも会談を行っている。タヤーニ氏は劉氏の訪問前、イタリア国営放送RAIに対して、「一帯一路」に参加したことにつき、イタリアは「多くの恩恵を受けていない」との認識を示していたとされる(「ロイター通信」2023621日)。

「一帯一路」のメリットを強調

中国国外のメディアは、今回の訪問の意図を「一帯一路」構想からのイタリアの離脱を引き留めたい思惑がある、と報道している。イタリアは20193月に中国と「一帯一路」構想に関する覚書を締結した。イタリアの同構想への参加理由について、中国による投資を低迷する経済の回復に利用したいという同国の思惑があるとしていた(2019年6月27付地域・分析レポート参照)。しかし、20235月にはブルームバーグなどが、イタリアが同構想からの離脱を米国に示唆していたことを報道。この報道を受けて、中国外交部の汪文斌報道官は510日の記者会見で、「中国・イタリア両国は『一帯一路』構想に関する覚書を締結して以来、経済貿易や工業製造、クリーンエネルギーなどの分野で協力し、成果を得てきた。両国はさらに『一帯一路』のポテンシャルを引き出し、各分野での協力を強め、両国関係の発展の成果が両国と両国民にさらなる恩恵をもたらすべきである」と述べ、「一帯一路」構想の成果とメリットを強調していた。

両国における近年の貿易状況を、グローバル・トレード・アトラス(原典は中国税関統計)を基にみると、イタリアの対中輸入額は大きく伸びている一方、対中輸出額はほぼ横ばいとなっており、貿易赤字は拡大傾向にある。また、中国対外直接投資統計公報で、2021年までの中国によるイタリアへの直接投資額(フロー)をみると、2020年以降は投資額が低迷している(添付資料参照)。

(楢橋広基)

(中国、イタリア)

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