「食糧安全保障法」(草案)公表、食糧事情などに基づいた食糧安全保障システム構築

(中国)

北京発

2023年07月06日

中国で「食糧安全保障法」の草案が6月26日に公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。28日から7月27日までパブリックコメントを募集している。草案は、北京市で開催された第14期全国人民代表大会(国会に相当)常務委員会第3回会議で初めて審議されていた。

草案は11章69条の条文から構成されている。食糧の有効な供給や食糧安全保障を確保するために、耕地の保護、食糧の生産・備蓄・流通・加工、食糧緊急事態への対応、食糧の節約などの面について具体的に定めた。

耕地の保護については、耕地と永久基本農地保護のレッドライン(最低基準)、生態保護のレッドライン、都市開発の境界を画定・徹底、耕地保護に対する補償制度の構築、耕地の林地・草地・園地などへの転用規制、耕地の用途管理の強化、高水準な農地の建設強化、耕地の質を向上させることなどが盛り込まれた。

また、食糧の生産・備蓄・流通・加工能力を向上させるために、国家農業遺伝資源バンクの建設・育種システムの整備、種子備蓄制度の構築、食糧生産機械化技術の普及、農業技術普及システムの構築、政府の食糧備蓄システムの構築、食糧流通にかかるインフラ建設・保護の強化などについて具体的に規定された。

食糧緊急事態への対応力強化については、緊急対応システムの構築、緊急時対応計画の策定、食糧市場に異常な変動が生じた際の報告制度の導入などとした。

このほか、国家安全保障に影響する、あるいは影響する可能性のある外資系企業による食糧生産経営への投資については、国家の関連規定に基づき、外商投資安全審査を実施するものとされた(第59条、注)。

中国政府は従来、最重要課題として食糧の安全保障に取り組んでいる。国家発展改革委員会副主任で国家食糧・物資備蓄局長でもある叢亮氏は5月11日の記者会見で、中国の稲と小麦の自給率は100%以上、穀物の自給率は95%以上となったと言及した(「中国新聞網」5月11日)。

海関総署の統計によると、2022年の中国の食糧輸入量は1億4,687万トンで、2021年より10.7%減少したものの、過去2位の高水準となった(「第一財経」1月14日)。うち、大豆の輸入量は9,108万トンで、全体の6割以上を占めた。

(注)外商投資安全審査は2021年1月18日から施行された「外商投資安全審査弁法」(2021年1月14日記事参照)に基づくもの。

(張敏)

(中国)

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