欧州委の研究機関、デジタルユーロの影響分析、利用上限設定を提案

(EU、ユーロ圏)

ブリュッセル発

2023年07月13日

欧州委員会の共同研究センター(JRC)は6月28日、欧州委がデジタルユーロ発行枠組み規則案を発表したことを受けて(2023年7月4日記事参照)、デジタルユーロに関する研究成果をプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。JRCは2つの報告書「中央銀行デジタル通貨(CBDC)と欧州の銀行のバランスシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(6月28日付)と「銀行の収益性とCBDC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(6月1日付)を発表しており、見解はそれらに基づく。

JRCは金融システムへの影響について、デジタルユーロは当面、ユーロ圏内のリテール取引(注)に限定されるとの前提で分析。さまざまなシナリオで調査の結果、デジタルユーロが銀行預金から資金流出を招き、特に小規模銀行の重要な資金源の1つである個人預金が脅かされる可能性があるとした。もっとも、デジタルユーロの普及が1世帯当たり3,000ユーロ未満であれば、金融の安定に大きなリスクはないとした。一方、デジタルユーロが普及し、需要が拡大した場合、銀行は資金調達やバランスシートの構造的な変化に迫られる可能性がある。

銀行の収益性への影響については、デジタルユーロの需要が高まった場合、特に資金調達の大半を預金に依存している小規模銀行の収益は低下し、深刻な影響を及ぼす可能性がある。デジタルユーロの利用上限の設定は、預金と預金からの収益を維持するための解決策になる可能性があり、CBDCの円滑な導入には実施戦略が必要だとした。

デジタルユーロがマクロ経済へ与える影響はわずかだとし、特にデジタルユーロに上限額を設けた場合、現金のみの場合と同様だと分析とした。

(注)個人や中小企業向け預金や融資などの業務。

(大中登紀子)

(EU、ユーロ圏)

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