最低賃金、2024年1月に時給12.41ユーロに引き上げ

(ドイツ)

ベルリン発

2023年07月06日

ドイツの最低賃金委員会は6月26日、2024~2025年の法定最低賃金(時給)引き上げを政府に対して勧告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。引き上げのスケジュールと金額外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは次のとおり。なお、現在の最低賃金は12ユーロ(2022年3月4日記事参照)。

  • 2024年1月1日~:12.41ユーロ
  • 2025年1月1日~:12.82ユーロ

最低賃金委員会は、労使双方を代表する委員と、投票権のない学界からの委員で構成されており、政府に対して、最低賃金の引き上げ幅と時期を勧告する。政府は、これを基に、勧告された時期に、勧告された金額を引き上げる。

今回の最低賃金委員会では、労使の主張の隔たりが大きく、労働組合側が反対票を投じた。このため、2015年に法定最低賃金制度が導入されて以来、初めて全会一致で可決されない結果となった。

勧告を受け、労働組合側を代表するドイツ労働総同盟(DGB)は同日に声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。声明の中で、労組側委員のステファン・ケルツェル氏は、最低限の労働者保護を確保し、インフレ上昇分を補うには最低賃金を最低でも13.50ユーロに引き上げるべきだと主張。さらに、使用者側が、引き上げ額算定の根拠とする最低賃金額を連邦政府が最低賃金法改正により2022年10月に引き上げた12ユーロではなく、前回勧告(2020年7月7日記事参照)の10.45ユーロを基準としたことは不合理だとして、合意できなかったと説明した。

使用者側を代表するドイツ雇用者協会連盟(BDA)も同日に声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。声明では、今回の委員会審議は経済成長が低迷し、ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受けている中で行われたこと、2022年は労働協約適用の従業員の賃金引き上げ率が前年比約2%で、使用者側はこれを引き上げ率のベンチマークとしたかったことを踏まえつつ、今回の最低賃金引き上げ額は妥当、との見解を示した。

フーベルトゥス・ハイル労働・社会相は「従業員や労働組合が最低賃金の引き上げを望んでいたことは承知している」としつつ、法律上は最低賃金委員会の勧告を受け入れずに最低賃金を据え置くことも可能だが、「最低賃金を引き上げないことは無責任」とし、連邦政府は勧告を受け入れる考えを示した。最低賃金の引き上げは、閣議決定を経て正式に決定される。

ドイツ経済研究所(DIW)のマルセル・フラッシャー所長は同日に、「最低賃金委員会の勧告は痛烈な失望」とのコメントを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。0.41ユーロ、すなわち3.4%の引き上げでは、特に低賃金で働く層にとっては現在のインフレ率(2022年は6.9%、2023年は6%を予測)を吸収できず、困窮者が増えると警告するとともに、適切な最低賃金額の目安を賃金中央値の60%以上と考えるEUの最低賃金指令案(2022年10月12日記事参照)によるとドイツでは13.50ユーロになり、指令案の考え方に反すると批判した。

なお、ドイツでは、業種ごとの労働協約により、業種別最低賃金が定められており、その金額は法定最低賃金を下回ることはできない。

(中村容子)

(ドイツ)

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