中国外交トップがブリンケン長官と会談、意思疎通を評価も対中制裁の取り消しなど要求

(中国、米国)

北京発

2023年07月18日

中国外交トップの王毅・共産党中央政治局委員は、インドネシア・ジャカルタで現地時間7月13日、米国のアントニー・ブリンケン国務長官と会見した。王政治局委員はASEAN外相会議に参加のためインドネシアを訪問していた。

王政治局委員は、6月の習近平国家主席とブリンケン国務長官の会談(2023年6月21日記事参照)を振りかえり、双方は率直な意思疎通ができたとした。中でも、習国家主席とジョー・バイデン大統領のバリ島会談(2022年11月16日記事参照)の内容に立ち戻った点が重要とし「中国・米国関係という巨大な船の針路を正す重要な一歩を踏み出した」と評価した。今後は米国が、両国関係が困難に陥った原因を反省し、バイデン大統領の合意事項を着実に実施することが必要だとした。

その上で「灰色のサイ」を阻止し、「ブラックスワン」に対応し、「道をふさぐ虎」(注1)を徹底的に取り除き、両国関係の安定に向けた条件を整え、妨害を排除するとした。米国は理性的で実務的な態度で、外交面で安全保障の意思疎通ルートを広げ、効率を高めるとともに、文化的・人的交流をスムーズに行うべきだとした。

王政治局委員は台湾問題についても立場を表明し、内政干渉をやめるよう要求した。また、経済・貿易および科学技術に関する抑圧を停止し、非合法で不当な制裁を取り消すよう求めた。その上で、中国と米国は「重要な影響力ある大国」として、地域協力においてASEANが中心となることを支援し、争いや複雑な要素を持ち込むことを避けるべきだとした。

そのほか、アジア太平洋および海洋関連の事務レベル協議実施に向けた検討を行った。

現地の報道では、7月14日付の「直新聞」は、2月に行われたドイツ・ミュンヘンでの両者会談と比べた緊張緩和を強調し、1カ月の間に2度会談(注2)したことについて「両国関係の現状を反映したもの」と評価した。

また、同日付の「環球時報」は、ジョン・ケリー気候問題担当大統領特使の訪中が予定されるなど、国際社会は両国関係の好転に期待を抱いている、と評価した。同時に、米国の政府機関が中国系ハッカーの攻撃を受けたとする件を取り上げ、米国は中国を裏で陥れるようなことはすべきでなく、さもなければ両国関係が安定した軌道に戻る機会を台なしにしてしまう可能性があるとした。

(注1)中国語で障害やじゃまものを意味する。

(注2)ブリンケン長官が6月に訪中した際にも、両者は会談を行っている。

(河野円洋)

(中国、米国)

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