6月の米小売売上高、前月比0.2%増と市場予想下回るも、3カ月連続で増加

(米国)

ニューヨーク発

2023年07月21日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(7月18日付)によると、6月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.2%増の6,895億ドル(添付資料表参照)となり、ブルームバーグがまとめた市場予想(0.5%増)を下回ったものの、3カ月連続の増加となった。なお、5月の売上高は、前月比0.3%増(速報値)から0.5%増に上方修正された(2023年6月16日記事参照)。

無店舗小売り、自動車・同部品などが押し上げ要因に

業種別にみると、無店舗小売りが前月比1.9%増の1,152億ドル(寄与度:0.32ポイント)と、全体を最も押し上げた。次いで、自動車・同部品が0.3%増の1,332億ドル(0.07ポイント)、その他が2.0%増の156億ドル(0.04ポイント)と増加に寄与した。一方、ガソリンスタンドは1.4%減の525億ドル(マイナス0.11ポイント)となった。また、第2四半期のコア売上高(注)は、前期比0.4%増だった(添付資料図1参照)。

今回の発表を受けた識者の見方はまちまちだ。オックスフォード・エコノミクスの米国担当エコノミストのオレン・クラチキン氏は「消費は続いているが、今月の小売売上高は、消費者がより慎重に買い物をするようになっていることを示唆している」と述べ、労働市場が勢いを失っていること、貯蓄が減少していることに加え、金利の上昇が借り入れやクレジットカードの利用を割高にしていることを指摘した(AP通信7月18日)。他方、FHNフィナンシャルのマクロ・ストラテジストのウィル・コンパノール氏は「16カ月にわたる米国連邦準備制度理事会(FRB)の金融引き締めの後、新型コロナ禍の下で蓄えた貯蓄の取り崩し、高インフレ、借り入れコストの上昇は、消費を大幅に減速させるまでには至らなかった」と述べ、消費力の強靭(きょうじん)さを評価した(ロイター7月19日)。

民間調査会社コンファレンスボードが6月27日に発表した6月の消費者信頼感指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは109.7と、5月(102.5)から7.2ポイント上昇し、2022年1月(111.1)に次ぐ約1年半ぶりの高水準となった(添付資料図2参照)。内訳をみると、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は155.3と、5月(148.9)から6.4ポイント上昇し、2021年7月(157.2)に次ぐ高水準となった。また、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は79.3と、5月(71.5)から7.8ポイント上昇した。

コンファレンスボードのチーフエコノミストのダナ・ピーターソン氏は、消費者信頼感指数が増加した背景について「これは、労働市場の状況が引き続き良好で、今後インフレ率がさらに低下するという消費者の見方を反映している可能性がある。実際、12カ月先のインフレ期待指数は6月に6%まで低下し、2020年12月以来の低水準となった」と述べている。

このように、インフレによる家計支出の圧迫が顕在化してきたものの、インフレ率の低下に対する期待が消費者マインドを押し上げている。今後のインフレの動向に注目だ。

(注)価格変動率の比較的高いフードサービス、自動車・同部品、建材・園芸用品、ガソリンスタンドを除いた数値。GDPベースの個人消費と相関関係がある。

(樫葉さくら)

(米国)

ビジネス短信 5ce11c95bf8a3ec4