米議会、米台貿易イニシアチブの承認法案を可決、政権に議会の関与迫る

(米国、台湾)

ニューヨーク発

2023年07月21日

米国議会上院は7月19日、「21世紀の貿易に関する米国・台湾イニシアチブ実施法案(H.R.4004)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を全会一致で可決した。同法案は6月に下院でも発声投票で可決されており、今後ジョー・バイデン大統領が署名すれば成立する。

法案は、議会で通商を所管する上院財政委員会と下院歳入委員会の幹部議員4人が6月に超党派で発表した。米国在台湾協会(AIT)と在米国台北経済文化代表処(TECRO)が同月に署名した、米台貿易イニシアチブの第1段階の協定を承認する内容となっている(2023年6月13日記事参照)。第1段階の協定では、米台が交渉マンデート(2022年8月19日記事参照)で定めた分野のうち、税関手続きと貿易円滑化、良き規制慣行、サービスの国内規制、反腐敗、中小企業を扱う。法案は、今後交渉するその他の分野(注1)に関する追加協定については、議会による審査手順を定め、協定発効前の議会承認を課している。

法案の可決を受け、ロン・ワイデン上院財政委員長(民主党、オレゴン州)は、この法案は「米国の台湾との経済的・戦略的パートナーシップを強化し、国際貿易に関して議会と米国民が発言権と投票権を持つことを確かにする」との声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ジェイソン・スミス下院歳入委員長(共和党、ミズーリ州)は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、上下両院の投票により「議会はバイデン大統領に対し、われわれが憲法上の通商権限(注2)を守ることに真剣だという明確なメッセージを送った」と述べ、大統領に早期に法案に署名するよう求めた。

バイデン大統領はこれまで、法案が可決された場合に署名するかを明言していない。バイデン政権は、米台貿易イニシアチブなどの政権が取り組む貿易交渉は関税削減などを含まず、国内法の改正が要らないため、議会承認は不要との立場を取っている。米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は、法案が下院歳入委員会で可決された際、「議会は貿易に関する憲法上のパートナーだ」と述べ、議会との協力姿勢を示した(政治専門紙「ポリティコ」6月13日)。

法案は民主、共和両党の支持を得ているため、バイデン大統領が法案に拒否権を発動しても、議会がそれを覆すのは容易とみられる(注3)。米国シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のウィリアム・レインシュ上級顧問は6月20付の論考外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、法案が超党派によるものであることを強調し、大統領にとって署名することが賢明と指摘している。

(注1)農業、基準、デジタル貿易、労働、環境、国有企業、非市場的政策・慣行。

(注2)米国の合衆国憲法は、外国との通商を規制する権限を連邦議会に与えている。

(注3)大統領の拒否権発動に対し、議会は上下両院の3分の2以上の賛成で法案を再可決できる。再可決された法案は、大統領の署名なしで成立する。

(甲斐野裕之)

(米国、台湾)

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