米議会、米台貿易イニシアチブ第1段階協定の承認法案発表、追加協定にも議会承認を義務付けへ

(米国、台湾)

ニューヨーク発

2023年06月13日

米国連邦議会で通商を所管する上院財政委員会と下院歳入委員会の幹部議員4人は6月9日、米国と台湾の通商枠組み「21世紀の貿易に関する米国・台湾イニシアチブ」の第1段階の協定を承認する超党派の法案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。法案は、同イニシアチブで今後見込まれる追加合意について、バイデン政権に議会との協議などを課す内容も含んでいる。下院歳入委員会は6月13日に法案の審議外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを行う予定だ。

米国と台湾は5月に米台貿易イニシアチブの第1段階の合意を発表し(2023年5月22日記事参照)、米国在台湾協会(AIT)と在米国台北経済文化代表処(TECRO)が6月1日に協定に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同協定では、交渉マンデート(2022年8月19日記事参照)で定めた分野のうち、税関手続きと貿易円滑化、良き規制慣行、サービスの国内規制、反腐敗、中小企業の5分野を扱う。

今回の法案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は第1段階の協定の実施法案の位置づけで、第1段階の協定を議会が承認すると定めている。また、交渉マンデートで定めた他の分野に関する今後の合意について、透明性確保と議会との協議を義務付けている。具体的には、米国通商代表部(USTR)に対し、交渉テキストは台湾側に共有する前に、最終的な協定文は公開45日前までに、それぞれ議会に提示するよう求めている。議会による協定文の審査手順も盛り込み、追加協定の発効には議会承認をする法案の成立が必要とした。

ロン・ワイデン上院財政委員長(民主党、オレゴン州)はプレスリリースで、協定に「超党派の承認プロセスによる支持と(それがもたらす協定の)持続性」を与えたいと言及した。ジェイソン・スミス下院歳入委員長(共和党、ミズーリ州)は「議会は初めからこの貿易交渉の主導権を握るべきだった」と述べ、「将来の協定が議会とのしっかりとした協議と議会承認を通じてのみ成立するようにすることが肝要だ」と指摘した。

米国では通常、貿易協定の批准・発効に当たり、上下両院で当該貿易協定の実施法案を可決する必要がある(注)。しかし、バイデン政権は、米台貿易イニシアチブが関税削減などを含まず、国内法の改正が要らないため、議会承認は不要との立場を取る。インド太平洋経済枠組み(IPEF)など、政権が進める他の通商枠組みについても同様だ。一方、連邦議会は、米国の合衆国憲法が外国との通商を規制する権限を連邦議会に付与していることから、それらの通商枠組みに基づく協定も議会承認が必要と主張している(2023年3月27日記事参照)。

今回の法案を受け、USTRの報道官は「第1段階協定の交渉や(そのほかの)全ての貿易イニシアチブで行ってきたように、台湾との次の交渉でも議会と協議するつもりだ」と述べ、政権が既に議会との協議義務を果たしているとの認識を示した(政治専門紙「ポリティコ」6月9日)。実際、USTRは台湾との交渉会合に合わせて議会スタッフにブリーフィングを行ったほか、3月には交渉の透明性へのコミットメントの一環として、交渉テキストの概要を公開外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。同イニシアチブは、米国と台湾の双方が必要な国内手続き完了後に、相手側に通知することで発効する。議会がこのような動きを見せる中、政権がどのタイミングで台湾に通知するのか注目される。

(注)政権は通例として、他国と合意した協定内容を議会で修正されないよう、あらかじめ大統領貿易促進権限(TPA)を求めてきた。TPAは法律の形式で議会が政権に付与する権限で、議会が設定した交渉目標や議会への報告・通知義務などにのっとって合意された貿易協定について、議会は内容を修正せず、実施法案の賛否のみを審議することを可能とする。しかし、直近のTPA法は2021年7月に失効しており、バイデン政権はそれ以降、議会に再付与を求めていない(2021年7月2日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国、台湾)

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