AMRO見通し、リスク後退に伴って経済成長の勢いは維持

(中国、香港、韓国、ASEAN、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、日本)

シンガポール発

2023年07月12日

シンガポールにある国際機関「ASEAN+3マクロ経済調査事務局」(AMRO)は7月11日、ASEAN+3(中国・香港、日本、韓国)実質GDP成長率の予測を発表し(AMROプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、2023年は前年比4.6%、2024年は4.5%と、2023年4月に発表した前回予測(2023年4月10日記事参照)から据え置いた。

グループ別にみると、2023年の「+3」(中国・香港、日本、韓国)の成長率予測(4.6%)を前回(4.5%)から引き上げた。「+3」のうち、香港(前回4.3%→今回5.2%)と日本の(1.2%→1.4%)の見通しを引き上げた。AMROは報告書で「インバウンド観光と内需の力強さを反映した」と説明した。

2023年のASEANの成長率は4.5%と、前回(4.9%)から引き下げた。ASEANの中では、ブルネイ(2.8%→1.0%)、カンボジア(5.9%→5.7%)、シンガポール(2.0%→1.3%)、タイ(4.1%→3.9%)、ベトナム(6.8%→4.4%)の見通しを引き下げた。シンガポールとベトナムについては、「外需低迷の影響を反映した」とした。2024年は、シンガポール(2.6%→2.9%)、ベトナム(7.1%→7.6%)の見通しを引き上げ、ASEAN全体で5.3%と前回(5.2%)から引き上げた。

2023年のASEAN+3のインフレ率の予測は6.3%と、前回(4.7%)見通しから引き上げた。急激な通貨安の影響を反映し、ラオスとミャンマーのインフレ予測はそれぞれ25%を超える。この両国を除いたASEAN+3地域は、3.0%と前回(3.4%)予測を下回る。ただし、フィリピンとシンガポールでは、主に国内コストの上昇圧力により、インフレ率が5%を上回ると予想されている。

AMROは、(1)先進国の経済活動はかなり底堅い、(2)世界の銀行システムのストレスが2023年3月以降緩和している、(3)一次商品価格が予想を下回っていることを挙げ、ASEAN+3地域の成長見通しに対する下方リスクが前回発表の4月以降、全体として後退していると指摘。その上で、現在想定されている主なリスクとして、(1)米国と欧州の景気後退、(2)中国の経済成長の鈍化、(3)米国の金融引き締めによる波及、(4)世界的な一次産品価格の高騰、(5)米国と中国の経済的デカップリングを挙げた。

(朝倉啓介)

(中国、香港、韓国、ASEAN、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム、日本)

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