アブダビで日・UAE・ビジネスフォーラム開催

岸田文雄首相は7月17日、アラブ首長国連邦（UAE）を訪問した。今回の訪問は、エネルギー安全保障上重要なサウジアラビア、UAE、カタールの中東3カ国歴訪の一環で、日本の首相によるUAE訪問は2020年以来3年ぶり。岸田首相は滞在中、ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領との会談を実施したほか、UAE経済省の主催、経済産業省・ジェトロ・中東協力センターが共催した「日・UAE・ビジネスフォーラム」で、脱炭素化を含む広範な分野での協力強化を打ち出した（2023年7月19日記事参照）。

日本はUAEとの「包括的・戦略的パートナーシップ・イニシアテチブ（CSPI）」（注）の下、クリーンエネルギー、半導体などの先端技術分野や、スタートアップ、医療・ヘルスケアなどの分野でUAEとの協力を拡大する。特に、2023年に国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議（COP28）が開催されるUAEとの脱炭素社会実現に向けた戦略的なパートナー関係進展のほか、両国間の投資促進を通じて経済多角化の実現に向けた協力関係の発展に期待を示した。

「日・UAE・ビジネスフォーラム」でアブダッラー・ビン・トゥーク・アル・マッリー経済相は、長年の協力関係にあり友好国である日本による今回の訪問は両国間の包括的な戦略的パートナーシップを強化する重要な機会と述べ、水素や風力などの再生可能エネルギー分野のほか、人工知能（AI）、先端分野、インフラ、ヘルスケア、観光などさまざまな分野の協力を日本に呼びかけた。

今回の訪問には、経済ミッションとして約40社の日本企業・団体トップが同行した。同フォーラムでは、岸田首相と、アブダビ首長国の王族で政府系ファンドのアブダビ投資庁マネジングディレクターを務めるハメド・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーン氏の立ち会いの下、両国の企業・団体間でエネルギーや先端技術、AI分野を含む23件の協力覚書（MOU、添付資料表参照）の交換式が行われた。続いて、グリーンスチール、グリーンケミカル、ヘルスケアの切り口から、日・UAEの企業が登壇し、各分野の両国間の協力強化に意欲を示した。

UAEの主要メディアのエミレーツ国営通信（WAM）は、今回の訪問やビジネスフォーラムの成果を報じている。

（注）2018年4月に安倍晋三首相（当時）がUAEを訪問した際に合意した「日本国とアラブ首長国連邦との間の戦略的パートナーシップの深化及び強化に関する共同声明」に基づく枠組み。2022年9月には詳細を定める「CSPIの実施に関する共同宣言」が締結されている。

（山村千晴）