ボリッチ大統領、教書演説で税制改革法案可決への協力呼びかけ
(チリ)
サンティアゴ発
2023年06月08日
チリのガブリエル・ボリッチ大統領は6月1日、バルパライソにある国会で就任後2度目の教書演説を行った。民主主義移行後で最長となった3時間36分にわたる教書演説の中で、「安全」「社会的権利」「持続可能な発展」の3つを軸に、就任から約15カ月で達成した政策と今後推進する政策について発表した。
達成した政策として、燃料価格の抑制や、高等教育の食糧奨学金の増額、低所得者向けの補助金増額、公的保険加入者向けの薬価格の引き下げ、条件を満たした加入者の自己負担額の撤廃などを挙げた。加えて、法定労働時間の段階的な引き下げ(2023年5月9日記事参照)や、最低賃金引き上げ(2022年5月30日記事参照)、新鉱業ロイヤルティー法案の承認、国家リチウム戦略発表(2023年4月28日記事参照)などの一連の政策に進展が見られた。一方で、政策の財源の要となる税制改革法案については、3月に下院で否決されたが、ボリッチ大統領は7月末に新たな税制改革法案を上院に提出する予定と発表し、議員に対して法案可決へ向けた協力を呼びかけた。
今後推進する主な政策は次のとおり。
〇安全
- 安全保障の強化に15億ドル拠出
- 公安省の創設
- 刑務所の収容能力を2026年までに12%増加
〇社会的権利
- 保育所を利用できる権利を全ての人に拡大
- 労働者が家庭と仕事の調和を図るための労働法改正
- メンタルヘルスへの投資拡大
- サービス、交通、緑地へのアクセスを備えた包括的な住宅プロジェクト構築
- 国家教育活性化計画として、学校の出席率向上や子供福祉を拡充
- 国民介護システムのサービスと機関の統合ネットワーク構築
- マウレ州、アラウカニア州、ロス・ラゴス州の鉄道計画の推進
〇持続可能な発展
- 冬期電気料金の廃止
- 消費者庁(SERNAC)の強化と近代化
- グリーン水素の世界的な主要生産者を目指す取り組み推進
- アタカマ砂漠に大規模電力貯蔵システムを設置する入札を可能にする法案を国会に提出
- 汚職防止の国家戦略を推進
- 森林火災の予防、軽減、制御のための森林火災法案を国会に提出
(岡戸美澪)
(チリ)
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