マクロン大統領、70億ユーロのスタートアップ企業支援を発表

(フランス)

パリ発

2023年06月20日

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は6月14日、パリで行われた欧州最大のオープンイノベーションイベント「ビバ・テクノロジー2023」を訪問し、金融・保険会社などの機関投資家が上場テック企業やレートステージ(成熟段階)のスタートアップ企業への投資をコミットする「Tibiイニシアチブ」の第2期を開始すると発表した。

同イニシアテチブは、ユニコーン(注)育成策の一環として2019年に発表された(2019年9月24日記事参照)。6月14日付政府資料外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、2020~2022年の第1期には国内23の機関投資家が総額60億ユーロを拠出し、ファンド・オブ・ファンズとして、レートステージにあるベンチャーキャピタルと、国内の上場テック企業に特化した投資ファンドに出資した。これが呼び水となり、第1期には総額約300億ユーロの投資が実現した。

第2期では、機関投資家が未来のテック企業育成に向け、総額70億ユーロの投資をコミットする。経済の脱炭素化、グリーン産業の振興、先端技術の開発などに優先して資金が提供される予定だ。

マクロン大統領は同日、人工知能(AI)の開発を支援する政策を発表した。同分野における人材育成の規模を2倍に拡大し、国内に5~10カ所のAIクラスターを整備するために5億ユーロの追加資金を投入する(2019年5月17日付地域・分析レポート参照)。また、生成AI分野では、BPIフランス(フランス政府公的投資銀行)を通じて5,000万ユーロを投資し、同分野における起業を支援する(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

大統領による一連の発表に合わせて、政府は同日、国家投資計画「フランス2030」の枠内で支援強化の対象となる、125社のスタートアップ企業「フレンチ・テック2030」のリストを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

フランスの産業およびデジタル技術の自立性確保に向けて、量子コンピュータ開発のパスカル(Pasqal)、生成AIモデル開発のダスト(Dust)やミストラルAI(Mistral AI)、次世代ワクチン開発のオジバックス(Osivax)、太陽光パネルのシリコン回収・再資源化のロジ・ソーラー(ROSI Solar)、農業用デジタル気象ステーションのセンクロップ(Sencrop)、バーチャルリアリティー(VR)コンテンツ制作のブルーム(Vrroom)などが選定された。

(注)BPIフランスの定義によると、評価額10億ドル以上の非上場企業。

(山崎あき)

(フランス)

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