日本、6年ぶりに「水素基本戦略」を改定、世界市場を視野に

(日本)

国際経済課

2023年06月09日

日本政府は6月6日、水素基本戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を6年ぶりに改定した。国内の水素製造と海外からの水素の購入を合わせた水素の「導入量」を、2040年までに年間1,200万トンに拡大するという目標を新たに設定し、官民合わせて今後15年間で15兆円の投資を行うとした。また、2030年までに国内外における日本関連企業の水電解装置の導入目標を15ギガワット(GW)程度と設定した。水素のコスト目標は、2030年に30円/ノルマルリューベ(Nm3、注)程度、将来的に20円/Nm3程度と従来のまま据え置いた。

日本は2017年に、世界で初めて水素国家戦略を発表。日本のエネルギー政策の基本的視点である「エネルギー安全保障、経済効率性、環境への適合と安全性(3E+S)」を実現するエネルギーとして水素を位置付けていた。今回の改定では、2017年の「水素基本戦略」には登場しなかった「水素産業戦略」が重要な柱として盛り込まれている。水電解装置など日本が強みを持つ9つの技術を戦略分野に指定し、重点的に支援する。今回の改定により、従来のエネルギー政策の側面に加え、日本企業の技術・製品を国内外の市場に普及させ、日本企業の産業競争力の強化につなげるという、水素関連産業を支援する産業政策の側面を重視したかたちだ。

世界では国家水素戦略の策定が相次いでいる。米国は6月5日に「国家クリーン水素戦略」を発表(2023年6月7日記事参照)。2030年までに年間1,000万トンのクリーン水素製造を目指す。また、欧州委員会は2020年7月にEUの水素政策の基礎となる「水素戦略」を発表し(2020年7月10日記事参照)、2030年までに最大年間1,000万トンというグリーン水素の域内生産目標を掲げた。さらに、2022年5月に発表した「リパワーEU」計画では域内生産目標に加えて、域外から年間1,000万トンの輸入目標を掲げている(2022年9月1日付地域・分析レポート参照)。両国・地域ともに、水素を脱炭素およびエネルギー安全保障の観点のみならず、次なる経済成長のドライバーとして位置付けており、水素関連産業はグローバル規模で競争が激化するとみられる。

なお、ジェトロは6月9日、主要国の水素戦略や主要プロジェクトを比較、概観し、水素サプライチェーンにおけるビジネス機会を探る特集、「各国が描く水素サプライチェーンの未来」を公開している。

(注)空気量の単位で、1気圧、摂氏0度の時の体積のこと。

(渡邉敬士)

(日本)

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