秦剛外交部長、米テスラのイーロン・マスクCEOと会見

(中国、米国)

中国北アジア課

2023年06月05日

中国外交部によると、秦剛・国務委員兼外交部長は5月30日、北京で米国の電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)と会見した。秦部長は、中国の人口規模が巨大な中で共同富裕を目指し、人と自然が調和をとりつつ共生を図る中国式現代化を推進するに当たり、未曽有の成長潜在力と市場のニーズが創出されるとしつつ、「中国の新エネルギー自動車(NEV)産業の発展の前途は広い」と強調した。上海市でEVを生産するテスラは4月9日、上海自由貿易試験区の臨港新エリア管理委員会と調印式を開き、大型蓄電システム「メガパック」の生産拠点を新設する契約を締結するなど、事業展開を加速している(2023年4月13日記事参照)。

秦部長は、中国は揺るぎなく高いレベルの対外開放を引き続き推進し、テスラを含む各国企業のために、市場化と法治化、国際化したビジネス環境の構築にさらに尽力するとして、外資誘致に積極的な姿勢を示した。また、健全で安定的、建設的な米中関係は両国にプラスで、世界にとってもプラスだと強調した。APEC貿易担当相会合への参加に合わせて米国を訪問した中国商務部の王文濤部長が5月25~26日、米国商務省のジーナ・レモンド長官や米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表とそれぞれ会談を行っており(2023年5月30日記事参照)、秦剛外交部長とマスク氏は、両国のコミュニケーションを継続することが確認された直後の会見だった。

マスク氏は、米中は利益が交わっており、結合双生児のように密接で不可分としつつ、「テスラは『デカップリング(切り離し)とサプライチェーン断絶』に反対する。中国での業務を引き続き拡大し、中国発展のチャンスをともに享受したい」と述べた。マスク氏は31日に中国工業情報化部の金壮龍部長とも会見し、新エネ車とICV(注)の発展などについて意見交換をした。

米中対立はなおも指摘される状況下だが、最近は米国大手企業経営層と中国政府高官の会見が続いている。4月11日には半導体大手インテルのパット・ゲルシンガーCEOと製薬大手イーライリリー・アンド・カンパニーのデイビッド・A・リックス会長兼CEOが相次いで商務部の王部長と会った。翌12日にはゲルシンガーCEOが工業情報化部の金部長と、5月17日には穀物大手アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)のフアン・R・ルシアノ会長兼CEOが商務部の陳春江部長助理と会見したことなどが明らかになっている。

(注)ICVとは、Intelligent Connected Vehicleの略称で、人工知能(AI)や高度の通信技術を導入し、安全性や効率性の高い自動運転を可能とする自動車の総称。

(宗金建志)

(中国、米国)

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