欧州単一特許制度がついに始動

(EU)

デュッセルドルフ発

2023年06月07日

統一特許裁判所(UPC)は6月1日、UPC協定が同日から発効し、UPCが業務を開始したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。UPC協定発効により、同日から単一特許規則の適用も開始され、欧州単一効特許と統一特許裁判所のパッケージからなる欧州単一特許制度が開始された。

欧州単一特許制度が開始したことにより、欧州各国で特許を取得する場合、欧州特許庁(EPO)が欧州特許を付与した後、欧州各国ごとに有効化(Validation)の手続きを経ずに、UPC協定の全批准国(注1)で単一の効力を有する欧州特許を取得できる。権利侵害時には、UPCへ提起すると全批准国で権利行使が可能となる。

UPC協定発効には、同協定の署名が行われた年の前年に有効だった欧州特許の数が最も多い3つのEU加盟国〔ドイツ、フランス、英国(英国離脱後はイタリア)〕を含む13カ国の批准が必要だった。途中、英国による同協定からの離脱、ドイツのUPC協定批准に係る法案に対する憲法異議申し立てなどにより、開始がたびたび延期されてきたが、2023年2月にドイツがUPC協定を批准したことで、同3月にサンライズ期間(注2)が開始され、6月1日に欧州の悲願だった欧州単一特許制度が始動した。

欧州単一特許制度は、1960年前後から検討が開始され、約60年近く議論されてきたため、UPCの開始は欧州の多くの知財関係者から歓迎されるとともに、今後の動向に大きな関心が寄せられている。

なお、欧州単一特許制度に関する詳細は、ジェトロの欧州知的財産ニュースを参照。

(注1)オーストリア、ベルギー、ブルガリア、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スウェーデン、ドイツの17カ国が批准済み。

(注2)単一効特許ではない既存の欧州特許に対するUPCの専属管轄からの除外要求を、UPC協定の発効に先立って早期に行うことが可能な期間。

(鹿戸俊介、中村勇介)

(EU)

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