通貨金融庁による民間予測集計、2023年経済成長率は前回から低下

(シンガポール)

シンガポール発

2023年06月15日

シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は6月14日、民間のエコノミストとアナリストが回答したフォーキャスターズ調査(Survey of Professional Forecasters)の結果を発表した(調査開始:5月25日、回答数:24人)。2023年のシンガポールの実質GDP成長率(経済成長率)予測の中央値は前年比1.4%と、前回調査(3月発表、2023年3月9日記事参照)の1.9%から低下した。

経済活動別では、「製造業」(前回:0.0%増→今回:1.3%減)、「金融・保険業」(2.5%増→1.3%増)、および「卸売・小売業」(1.9%増→0.8%増)が前回調査から低下した。他方で、「建設業」(4.2%増→7.0%増)、および「宿泊・飲食業サービス」(8.4%増→10.0%増)は上昇した。

シンガポール経済に対する下振れリスクについては、「海外経済の成長減速」(前回:50.0%→今回:61.1%)を挙げる割合が最も高く、「インフレーション」(56.3%→55.6%)、「地政学的緊張」(56.3%→44.4%)が続いた。前回調査では、「インフレーション」と「地政学的緊張」を挙げる割合が最も高かったが、今回の調査では、「海外経済の成長減速」と回答する割合がそれらを上回った。なお、2023年の消費者物価指数(CPI)上昇率(前年比)の中央値(5.0%)、MASが政策判断で重視する宿泊費と自家用道路交通費を除いたMASコアインフレーション(4.1%)は前回調査から変化がなかった。

上振れリスクについては、経済(活動)再開やマクロ経済政策の緩和による「中国」のより力強い成長を挙げた割合(70.6%)が、前回調査(87.5%)に引き続き最も高かった。上位3つにはそのほか、予想を上回る「海外経済の成長」(前回:50.0%→今回:41.2%)と「〔人工知能(AI)関連の成長といった〕テックサイクル(の回復)」(31.3%→41.2%)が挙がった。「中国」と「海外経済の成長」を挙げる割合が前回調査から低下した一方で、「テックサイクル」と回答する割合が拡大した。最大の上振れ要因については、「中国」と回答した割合(56.3%→29.4%)が低下した一方で、「海外経済の成長」(12.5%→17.6%)、および「テックサイクル」(0.0%→11.8%)と回答した割合が増加した。

(朝倉啓介)

(シンガポール)

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