通貨金融庁による民間予測集計、2023年経済成長率は前回から上昇

(シンガポール)

シンガポール発

2023年03月09日

シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は3月8日、民間のエコノミストとアナリストが回答したフォーキャスターズ調査(Survey of Professional Forecasters)の結果を発表した(調査開始:2月13日、回答数:21人)。2023年のシンガポールの実質GDP成長率(経済成長率)予測の中央値は前年比1.9%と、前回調査(2022年12月発表、2022年12月16日記事参照)の1.8%から上昇した。

経済活動別では、「卸売・小売業」(前回:1.4%増→今回:1.9%増)と「宿泊・飲食サービス業」(5.6%増→8.4%増)が前回調査から上昇した。他方で、「製造業」(0.3%増→0.0%増)、「金融・保険業」(2.9%増→2.5%増)、「建設業」(5.1%増→4.2%増)は低下した。

シンガポール経済に対する上振れリスクについては、経済(活動)再開やマクロ経済政策の緩和による「中国」のより力強い成長を挙げた割合(87.5%)が、前回調査に引き続き最も高かった。上位3つにはそのほか、予想を上回る「国外経済の成長」(50.0%)、「技術サイクル」(31.3%)が挙がった。「技術サイクル」が前回調査では言及されていなかったことに触れたうえで、「テック分野の成長を促進するChatGPT〔OpenAIが開発した対話型人工知能(AI)ツール〕といったAIの可能性に弾みがついているようだ」とした現地エコノミストの発言などが報道されている〔2023年3月8日付「ビジネス・タイムズ」紙(オンライン版)〕。

下振れリスクについては、「地政学的緊張」(前回:50.0%→今回:56.3%)と「インフレーション」(43.8%→56.3%)と回答した割合が最も高かった。上位3つにはそのほか、「国外経済の成長減速」(62.5%→50.0%)が挙がった。

下振れリスクの上位3つのうち、「国外経済の成長減速」の回答割合が前回調査と比べて低下した一方で、「地政学的緊張」と「インフレーション」の回答割合が上昇した。2023年の消費者物価指数(CPI)上昇率の中央値は前年比5.0%と、前回調査(5.2%)から低下した一方で、MASが政策判断で重視する宿泊費と自家用道路交通費を除いたMASコアインフレーション(4.1%)は前回調査(4.0%)からわずかに上昇した。

(朝倉啓介)

(シンガポール)

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