世界銀行、2023年の南アジアの経済成長率を5.9%と予測

(インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ)

アジア大洋州課

2023年06月15日

世界銀行は6月6日に発表した「世界経済見通し」〔プレスリリース(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)〕で、南アジア地域(SAR、注1)の2023年の実質GDP成長率を5.9%と予測し、前回(2023年1月)の見通しから0.4ポイント上方修正した(2023年1月25日記事参照)。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻に伴う食糧やエネルギー価格の上昇、先進国の急速な金融引き締め、中国経済の減速などの影響は落ち着き、地域の経済状況は改善されているものの、経済成長は引き続き鈍化している。

同地域のGDPの4分の3を占めるインドについて、高インフレと借り入れコストの上昇により民間消費に制限がかかること、また政府消費は財政再建により抑制されるため、同国の成長率は2023/2024年度(2023年4月~2024年3月)に6.3%(1月から0.3%ポイント下方修正)に減速すると予測した。

バングラデシュでは、インフレ率の上昇、政策の不確実性、外需の弱体化により、2022/2023年度(2022年7月~2023年6月)の成長率は、前回予想の5.2%を据え置いた。輸入抑制策の継続およびエネルギー不足が、同国の工業生産とサービス部門の両方に重くのしかかっているとコメントした。

スリランカでは、2024年(暦年)に緩やかな回復が始まるまで、2023年の成長率はマイナス4.3%と推測した。同レポートでは、バングラデシュおよびスリランカで、総貸付額に対する不良債権の割合が上昇し、最近になって増加しているとし、両国の金融セクターリスクに対する懸念が示された。

パキスタンは、2022/2023年度(2022年7月~2023年6月)の成長率が0.4%と、前回見通しから1.6%下方修正された。成長が制限される要因として、2022年7~8月に同国を襲った洪水の持続的な影響(2022年8月30日記事参照)に加え、政策の不確実性や、食料、エネルギー、中間資材の輸入支払いのための外貨準備高が限られている点を並べた。

南アジア地域の2024年の経済見通しについては5.1%(前回見通しから0.7%の下方修正)と大きく減速すると予測。下振れリスクとして、高い政府債務と対外債務、低い外貨準備高、社会経済的な緊張が、金融危機のリスクを高め、潜在的なGDPの伸びも著しく低下させる可能性について指摘した。

(注)世界銀行の区分では、アフガニスタン、インド、スリランカ、ネパール、パキスタン、バングラデシュ、ブータン、モルディブの8カ国を指す。

(寺島かほる)

(インド、スリランカ、パキスタン、バングラデシュ)

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