広東省、税制優遇や徴税管理の改善方針を発表

(中国)

広州発

2023年06月01日

中国の広東省税務局は5月23日に、「税収により広東省の質の高い発展を推進する若干の措置」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、措置)を発表した。同措置は、1.広東・香港・マカオグレーターベイエリア(粤港澳大湾区、以下ベイエリア)の建設、2.製造業の発展促進、3.イノベーション、4.農村振興、5.貿易・消費拡大、6.民生、の6分野を対象とする(注1)。

主な内容は次のとおり。

  1. ベイエリアの個人所得税・企業所得税減免などの地域的な税収優遇政策を着実に施行し、ベイエリアにおいて税収管理とサービスの一体化を推進する。
  2. 「留抵退税(優遇政策による納付済み増値税の還付)」を引き続き実施し、製造業の発展を加速する[条件を満たす製造業企業向けに、毎月、増値税控除留保税額(注2)の増加分を全額還付など]。製造業の中小・零細企業向けには大規模な支援(増値税・個人所得税の減免など)を実施し、大企業・重点プロジェクト向けに、「一項目一専班(注3)」「一企一策(注4)」を展開する。
  3. ハイテク企業向けの企業所得税減免、研究開発費税額控除(控除率100%)などの優遇政策の実施により、イノベーションを促進する。支柱産業および新興産業クラスター(2020年6月9日記事参考)へのサービス強化、企業の研究開発への投資拡大の促進などにより、イノベーションチェーン・産業チェーン・サプライチェーンの融合を促進する。
  4. 工業園区・工業クラスター向けに専門的な税収サービスを提供するなどし、税源確保に努める。農業生産法人および個人向け増値税・所得税を減免するなどし、現代農業の発展を促す。資源の総合利用に関する増値税の即時徴収・即時還付など、グリーン税制の健全化を進める。
  5. 輸出税還付処理を迅速化するための管理体制の整備などにより、対外貿易の新業態の発展を支援する。移転価格の事前確認(注5)、域外投資者による収益を活用した再投資に対する繰延納税措置の深化などで、「走出去」「引進来」のサービスモデルを完備する。新エネルギー車の購入税、新エネルギー・省エネルギー車の車船税、中古車の増値税の減免などで、重点分野における内需拡大、消費振興を効果的に進める。
  6. 雇用・民生に関する税収優遇政策や、段階的な社会保険料の負担軽減策(失業保険税率を1%に引き下げなど)を実施し、フレキシブルワーカーのための社会保険制度を完備する。

なお、広東省税務局によると、同省の2022年税金還付・減免額は4,656億元(約9兆3,120億円、1元=約20円)で、過去最高を記録した。

(注1)同措置は、重点任務に関する16条および保障措置に関する5条の合計21条からなる。

(注2)未控除仕入増値税ともいう。中国語で「留抵税額」。

(注3)「一項目一専班」とは、各プロジェクトに対して個別にサービス専門班を設けるもの。

(注4)「一企一策」とは、各企業に対して個別に優遇政策を提示するこをと指す。

(注5)移転価格課税に関する納税者の予見可能性を確保するため、納税者の申出に基づき、その申出の対象となった国外関連取引に係る独立企業間価格の算定方法およびその具体的内容(独立企業間価格の算定方法等)について、税務機関が事前に確認を行う。

(梁梓園)

(中国)

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