中国日本商会、2023年版の白書発表、個人所得税やデータ移転の問題などで建議

(中国、日本)

北京発

2023年06月16日

在中国日系企業などで構成する中国日本商会は6月14日、「中国経済と日本企業2023年白書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発刊した。白書は中国の中央・地方政府との対話促進を目的として、中国各地の商工会組織の日系企業(法人会員8,353社)が直面する課題の分析や解決のための建議(総数505件)をまとめたもの。白書作成に当たっては、最前線で中国ビジネスに取り組む会員企業など約50人が執筆を担当し、中国日本商会調査委員会(事務局:ジェトロ北京事務所)が企画・編集などの取りまとめを行った。

今回で第14版となる白書の主要な訴求点は引き続き「公平性の確保(特に予見性・透明性の向上)」に、重点分野は「税務に関する問題」と「データの越境・管理に関する問題」の2点に設定した。

税務に関しては、個人所得税について、外国籍人員に対する免税措置の適用が2023年末までとなっており、廃止されると外国籍人員を抱える企業の税負担が大幅に増加することから、免税措置の無期限延長を要望している(注1)。また、2022年7月に施行された印紙税法の関連公告の中で、海外企業が中国国内企業と課税文書を作成する場合、中国国外で作成したものでも顧客などの取引先が中国国内に存在する場合、海外企業も納税義務を負うことが明示されたことを受けて、当該規定の見直しを求めている。

データに関しては、データ3法(サイバーセキュリティー法、データセキュリティー法、個人情報保護法)とその関連法規に基づくデータの域外移転に関する運用が本格化し始める一方、重要データの定義など依然として明確でない点が多いといった問題が各業界から提起されていることを受け、事前ガイダンスの提供や関係政府部門間の調整・連携、運用で外資系企業が差別的に扱われないことを要望している。

白書の建議を3つの柱に集約した「建議の3要素」は引き続き「公平な競争」「対外開放」「行政の規制運用・手続き」とした。「公平な競争」では、政府調達での輸入品と国産品、外資系企業と中国企業の平等な取り扱い(注2)や、独禁法の企業結合の届け出や審査に関する基準の明確化などを要望した。また「行政の規制運用・手続き」では、医療機器や化粧品といった業界における各種規制の運用面での配慮や、ファイナンスリース会社に対する省・直轄市・自治区を越えた範囲の営業に対する規制について導入の見直しを求めた。

(注1)同問題の経緯は2022年1月12日記事参照

(注2)具体的には、事務機器や医療機器といった分野で、外資系企業や外国製品を排除しないよう、調達の透明性の向上や予見可能性の確保、調達プロセスの適正化などを求めている。

(小宮昇平)

(中国、日本)

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