タイ中央銀行、クロスボーダー決済を拡大へ

(タイ、ASEAN、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インドネシア、カンボジア、日本)

バンコク発

2023年06月21日

タイ中央銀行(BOT)は5月9日、タイのクロスボーダー決済連結性に関する現状を公開した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。BOTによると、タイは現在、日本を含む6カ国との間でクロスボーダーQR決済が可能となっている。また、シンガポールとの間では、携帯電話番号に基づくクロスボーダー送金(低手数料での即時送金)ができる(添付資料表参照)。タイのクロスボーダー決済については、タイの電子決済システム「プロンプトペイ(PromptPay)」の利用範囲を拡大するかたちで進んでいる。同システムは利便性が高く、迅速性・安全性も優れており、コストも低い。

具体的な活用例としては、タイからの観光客がベトナムで旅行する際、バンコク銀行(BBL)のモバイルアプリを使って、ベトナム国内の加盟店(小売店など)で、ベトナムの銀行のQRコード「VietQR」をスキャンし、商品・サービスの代金を支払うことができる。または、マレーシアからの観光客がタイで旅行する際、マレーシアの銀行のモバイルアプリを使用して、タイ国内の加盟店でタイの銀行のQRコードをスキャンし、商品・サービスの代金を支払うことができる。

シンガポールとの2国間送金については、同国のペイナウとタイのプロンプトペイが連結することで、シンガポールで働くタイ人が、タイの銀行口座を持つタイ国内の受取人に対し、シンガポールの銀行のモバイルアプリを通じて、送金することができる。反対に、タイで働くシンガポール人も、シンガポールの銀行口座を持つシンガポール国内の受取人に対し、タイの銀行のモバイルアプリを使って、送金することができる。いずれも、受取人の携帯電話番号に基づいて送金される。

BOTによれば、プロンプトペイが2016年に開始されて以降、登録者数や取引件数が継続的に増加している。特に、新型コロナ流行時には、キャッシュレス化とオンライン取引の普及が劇的に上昇したという。実際、タイ銀行協会(TBA)の資料によれば、プロンプトペイの取引件数は、2017年の7,200万件から2022年では137億600万件に増加した。取引額は、2017年に2,790億バーツ(約1兆1,160億円、1バーツ=約4円)から2022年には5兆2,240億バーツに増大した。

国内での成功を受け、BOTは「ASEAN決済連結性構想(2023年5月15日記事参照)」の一環として、プロンプトペイの適用範囲をASEAN加盟国にも拡大。また、タイと経済的な結びつきが強い国々、特に移民労働者や観光客の往来が多い国々との連携が進められている。 今後、BOTはパートナー国を増やすとともに、サービスプロバイダーの数を増やしていくという。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(タイ、ASEAN、シンガポール、マレーシア、ベトナム、インドネシア、カンボジア、日本)

ビジネス短信 6cd7a94806f43396