デューディリジェンス法、金属・電機分野の中堅・中小企業にも間接的に影響

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年06月20日

ドイツ国内の金属産業の使用者団体を取りまとめる、ゲザムトメタル(Gesamtmetall)は61日、ドイツで20231月に施行された「サプライチェーンにおける企業のデューディリジェンスに関する法律」(以下、「デューディリジェンス法」、注)に関するアンケート調査結果を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

本アンケート調査は、ゲザムトメタル傘下の金属・電機使用者団体の加盟企業を対象に、51026日に実施したもの。回答企業数は683社で、加盟企業の約1割に相当する。

デューディリジェンス法は、ドイツ国内の従業員3,000人以上の企業、20241月以降は従業員1,000人以上の企業を対象に、「注意義務(デューディリジェンス)」として、人権や環境に関連するリスク管理体制の確立と責任者の明確化、および定期的なリスク分析の実施などを求めている。自社自体が法律の対象でなくても、間接的に法律の影響を受けることが指摘されている。

アンケート調査では、まず、デューディリジェンス法の影響を受けたかとの問いに対しては、「顧客やサプライヤーを通じて間接的に影響を受けた」が64%で最も多く、「影響を受けていない」が16%、「直接的な影響を受けた」が14%で続いた。企業規模別では、従業員1249人では70%、従業員250999人では86%が「顧客やサプライヤーを通じて間接的に影響を受けた」と回答した。従業員1,000人以上では、「直接的に影響を受けた」が89%、「間接的に影響を受けた」が7%と、合わせて96%が影響を受けていることが判明した。

デューディリジェンス法に対応するための年間費用に対する質問では、従業員1249人(回答企業188社)では平均29,818ユーロ、250999人(108社)では平均68,781ユーロ、1,000人以上(78社)では平均206,188ユーロとの回答となった。同法への対応のため、新たに従業員を採用または採用予定とした企業も18%に上った。

デューディリジェンス法が顧客やサプライヤーとの関係に及ぼした影響(複数回答可)では、「コスト増のため価格を上げざるを得なかった」が26%、「サプライヤーからの調達を中止または中止を計画」が15%、「環境・人権関連のガバナンスが弱い国からの撤退または撤退を計画」が14%、などとなった。また、デューディリジェンス法が企業の競争力に与えた影響(複数回答可)としては、「競争力の低下」と「投資や貿易関係の不透明感の高まり」がともに64%、「強靭(きょうじん)性・多様性の低下」が54%などとなった。

ゲザムトメタルは、1890年の設立。ゲザムトメタルの傘下には22の金属・電機産業関連の使用者団体があり、これら使用者団体に加盟する企業数は7,100社、従業員数は240万人以上に及ぶ。なお、ゲザムトメタルは20223月、ドイツとEUのデューディリジェンス法の効果を検証する調査をキール世界経済研究所(IfW)に委託、公表している(2022年3月29日記事参照)。

(注)ジェトロはデューディリジェンス法の参考和訳PDFファイル(550KB)と、同法を所管する連邦経済・輸出管理庁が作成したリスク分析の実施ガイダンスの参考和訳PDFファイル(622KB)を公表している。

(高塚一)

(ドイツ)

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