ASEAN共同体のポスト2025ビジョン、気候変動対応やイノベーションが焦点に

(ASEAN、タイ、インドネシア)

バンコク発

2023年06月07日

タイ商務省貿易交渉局(DTN)は5月26日、インドネシアで5月10日に開催された第42回ASEAN首脳会議(2023年5月15日記事参照)で合意されたASEAN共同体の「ポスト2025ビジョン」の中核となる要素について言及した。経済分野では、経済高度化、サステナビリティと気候変動への迅速な対応、新たな発展のトレンド(デジタル、テック、イノベーション)の認識、グローバル社会への統合、さまざまな圧力・危機・不確実性に対する組織的なアプローチ、全ての当事者(女性、若年層、高齢者、障がい者、社会的弱者、中小零細企業など)が公平に参画可能なビジネス機会の促進、などが提案されている。

ASEANはこれまで、「ASEAN共同体ビジョン2025PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を指針として域内協力を深化させてきた。ASEAN共同体は、ASEAN政治・安全保障共同体(APSC)、ASEAN経済共同体(AEC)、ASEAN社会・文化共同体(ASCC)の3つの共同体で構成されるが、それぞれの共同体は2025年までの「青写真(ブループリント)」に基づき、具体的な行動計画を進めている。「ポスト2025ビジョン」は2025年以降の方向性を示す文書として策定され、APSC、AEC、ASCCおよび連結性、調整メカニズムの各分野での指針となる。

今後、ASEAN共同体ポスト2025ビジョンに関するハイレベルタスクフォース(HLTF-ACV)が同ビジョンを起草し、2025年内に完成させ、ASEAN首脳により採択される予定だ。2026年以降、同ビジョンに基づく行動計画が実施される。

SEOMではATIGAのアップグレードについて議論

DTNや報道によれば、5月22日から26日にかけてASEAN高級経済実務者会合(SEOM 2/54)がジャカルタで開催され、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)のアップグレード、デジタル化やサステナビリティに関する課題、ビジネスの円滑化〔例:ASEANの関税率検索システム、事業者識別番号ネットワーク(UBIN)システムなど〕、ASEAN経済大臣会合(AEM)が所管する2023年の優先経済成果物(PEDs)〔例:ASEANサービス円滑化枠組みの開発、地域的な包括的経済連携(RCEP)協定の支援ユニットの設立、ATIGA電子原産地証明書の完全な利用など〕といったテーマが議論された。

また、ASEANの対話パートナー(注)との間では、ASEAN中国自由貿易協定(ACFTA)のアップグレード、電子商取引(EC)での協力、日ASEAN友好協力50周年を記念した日本との経済行動計画、ASEAN韓国FTA改定に向けた共同研究、ASEANインドFTA改定交渉に向けた準備、ASEANカナダFTA交渉の進捗、米国との貿易・経済協力などが協議された。

(注)2023年6月時点のASEANパートナーは、オーストラリア、カナダ、中国、EU、インド、日本、韓国、ニュージーランド、ロシア、米国、英国の11カ国・地域。

(北見創、シリンポーン・パックピンペット)

(ASEAN、タイ、インドネシア)

ビジネス短信 38b1dd30c1a6c654