欧州産業連盟、デジタル貿易についてEUに提言

(EU)

ブリュッセル発

2023年06月13日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は6月6日、デジタル貿易に関する政策提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。WTOによると、世界のデジタル関連サービス輸出は2005年~2022年に年平均8.1%成長し、約4倍に拡大、欧州はその半数以上を占める。世界貿易で比重が年々増す中、世界共通ルールは形成途上にある。提言書では、規制が国や地域ごとに細分化し、企業のデジタル化の遅れや競争力低下につながっていると指摘。「データ・フリー・フロー・ウィズ・トラスト(信頼性のある自由なデータ流通)」の実現と、より明確なデジタル貿易についてのEUレベルと国際的なルール形成が必要と訴え、EUが今後の自由貿易協定(FTA)交渉などで、デジタル貿易関連で盛り込むべき原則や取るべきアクションを提言した。

貿易交渉では、個人情報を適切に保護した上で自由な越境データ流通を認め、強制的なデータローカライゼーションの禁止や、ソースコードやアルゴリズムの開示義務付け・移転の禁止が中核的要素となるとした。加えて、電子書類や署名といった電子的手段によるサービスや製品を排除しないことや、技術の強制移転の禁止、消費者保護も盛り込むべきと主張。発効済みの協定の中ではEU英国通商・協力協定(TCA)のデジタル貿易章(注)が最も野心的なもので、今後のあらゆる交渉で参照されるべきとした。

世界共通ルール形成に向けては、米国との貿易技術評議会(TTC、2023年6月6日記事参照)や、G7やOECDメンバー国との協議を通じてデジタル貿易の定義や原則を定め、WTOの電子商取引に関する多国間交渉の妥結に最優先で取り組むことを提言。これから締結する協定だけではなく、発効済みの貿易協定でデジタル貿易関連の条項がないものについても、適切なデジタル貿易協定を別途締結し補完するなど、2国間協定ではTCAと同様の文言でデジタル貿易に関する規定を定めるべきとした。

また、EU域外向けのインフラ支援戦略「グローバル・ゲートウェイ」(2021年12月3日記事参照)によって、互換性の向上やデジタル格差の解消に向けたインフラ整備への民間投資の活用促進の努力も必要と指摘。新たにデジタル化関連の戦略や法案を策定する際には、貿易や投資、域外市場でEU企業の競争力に与え得る事象を影響評価で分析することや、デジタル貿易分野の法案策定に当たっては幅広い関係者の参画を求め、野心的で明確な内容とすることも要請した。

(注)ジェトロの調査レポート「EU英国通商・協力協定を踏まえた日本企業のビジネス上の留意点」(2022年3月)の84~85ページを参照。

(滝澤祥子)

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