在ロシアの欧州企業の売り上げ見通しは改善傾向

(ロシア)

欧州課

2023年06月27日

在ロシア欧州ビジネス協会(AEB)は6月9日、会員企業を対象としたアンケート調査「在ロシア欧州企業の戦略と展望」の結果を公表した。今回調査では、ロシアによるウクライナ侵攻後初の実施となった前回調査(2022年6月22日記事参照)に引き続き、制裁が企業に与える影響の大きさや、投資について慎重な企業の姿勢が明らかになった。一方で、欧州企業の売り上げに関する見通しは改善した。また、直ちにロシア事業の閉鎖を検討している企業は限定的だった。

今後3年の収益に関する見通しについて、「増加する」と回答した企業の比率は、2022年調査と比べ24ポイント高い48%だった。「減少する」とした企業は2022年調査と比べ29ポイント減少し、収益に関する見通しは改善傾向にあることが明らかになった(添付資料図1参照)。

一方で、今後2~3年の投資の見通しについては、「増加する」と回答した企業は11%にとどまり、投資については企業の慎重な姿勢が続いている(添付資料図2参照)。

ロシアのウクライナ侵攻に伴う西側諸国の制裁やロシアの対抗措置のビジネスへの影響については、83%の企業が影響ありと回答した(添付資料図3参照)。その中で、ビジネスに悪影響を及ぼした措置の主なものとしては、対ロシア輸出入制限(59%)、ロシア金融機関を対象とした制裁(53%)、輸送制限(40%)が挙がった(添付資料図4参照)。西側とロシア双方の措置により、企業は投資計画の変更やマーケティング費用の削減、人事的措置の実行、新商品・サービス・モデルの発売見合わせなどを余儀なくされた。その一方で、 AEB加盟企業の58%は人材を確保する努力をしている。

今後1年間でロシア事業を閉鎖する可能性については、13%の企業が「高い」、15%が「中程度」、58%が「低い」と回答(添付資料図5参照)。前回調査と比べると、「高い」と「中程度」がそれぞれ3ポイント、17ポイント低下し、「低い」が19ポイント増加した。2022年12月20日に発表されたスイスのサンガレン大学の研究結果(注)によると、EU域内またはG7に本社を置く企業のうち、1社以上のロシア子会社の株式売却を完了した割合は8.5%にとどまっている。

アンケート調査は4月から5月にかけて実施され、AEBに加盟する約500社のうち93社が回答した。この調査は毎年実施しており、今回が16回目。

(注)サンガレン大学は、EU域内またはG7に本社を置き、かつ2022年4月時点でロシアに子会社を有する企業データベースORBISで把握できた1,404社を対象に調査。そのうち、同年11月下旬までに1社以上のロシア子会社の株式売却を完了した企業数は120社だったとしている。

(後藤大輝)

(ロシア)

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