供給網逼迫による物価上昇はほぼ解消、コア指数高止まり主因のサービス価格に鈍化の兆しなし

(米国)

ニューヨーク発

2023年06月14日

米国の2023年5月の消費者物価指数(CPI)は、ピークだった2022年6月の前年同月比9.1%上昇から半分以下の4.0%上昇まで低下する一方、コア指数は5.3%で高止まりした(2023年6月14日記事参照)。供給網の逼迫状況を示すグローバル・サプライチェーン圧力指数(GSCPI)は、2023年5月はマイナス1.71まで低下した。GSCPIが新型コロナ禍前の2019年を下回り、過去約20年間で最低水準にあることから、供給網の逼迫による物価上昇はほぼ解消したとみられる。コア指数の高止まりの主因は、サービス価格の動向だ。

物価に占めるシェアが約3割の住居費は、前年同月と比べ、2カ月連続で伸びが鈍化した(4月:8.1%上昇、5月:8.0%上昇)。一方、前月比では4月が0.4%上昇、5月が0.6%上昇と伸びが加速しており、ニューヨーク市マンハッタンにおける5月の賃貸集合住宅の新規賃料中央値は4,395ドルと、3カ月連続で過去最高値をつけた(ブルームバーグ6月8日)。すなわち、伸びの鈍化は依然として鮮明でない。さらに、輸送サービスは前年同月比10.2%上昇しており、サービス価格の中で重要な賃金の伸びがいまだに高い。平均時給は2023年に入り前年同月比4%台半ばで停滞しており、目立った鈍化の兆しが見られない(2023年6月5日記事の添付資料表1参照)。個人の賃金の伸びを追跡調査している、アトランタ連邦準備制度銀行の「賃金成長トラッカー」でも、5月は6.0%(12カ月平均の伸びの中央値)と高止まりしている。

長引くインフレは、米国民の家計を圧迫している。連邦準備制度理事会(FRB)が1万1,667人から回答を得て、2023年5月22日に公表した調査によると「2022年の支出は増えたが、収入は増えなかった」と回答した割合が23%に上った。「インフレを理由に、製品の使用を中止した、使用量を減らした」が64%、「貯蓄額を減らした」が51%だった。また、全体の28%は、高コストを理由に過去1年間医療を受けていないようだ。

2023年4月の小売売上高は前月比0.4%増と(2023年5月17日記事参照)比較的堅調で、高インフレにより消費者心理は悪化している。

(宮野慶太)

(米国)

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