4月の米小売売上高は前月比0.4%増と予想を下回るも、3カ月ぶりの増加

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月17日

米国商務省の速報PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(5月16日付)によると、4月の小売売上高(季節調整値)は前月比0.4%増の6,861億ドル(添付資料表参照)と3カ月ぶりの増加に転じた。ブルームバーグがまとめた市場予想(0.8%増)を下回ったものの、コア売上高(注)は前月比0.7%増と予想の0.4%増を上回り、2023年で最も増加した。なお、3月の売上高は、前月比1.0%減(速報値)から0.7%減(改定値)に修正された(2023年4月17日記事参照)。

無店舗小売り、総合小売り、自動車・同部品などが押し上げ要因に

業種別にみると、無店舗小売りが前月比1.2%増の1,126億ドル、寄与度0.20ポイントと全体を最も押し上げた。次いで、総合小売りが0.9%増の735億ドル(寄与度:0.10ポイント)、自動車・同部品は0.4%増の1,300億ドル(0.08ポイント)と増加に寄与した。一方、ガソリンスタンドは0.8%減の546億ドル(マイナス0.06ポイント)と減少した。

今回の発表を受けて、全米小売業協会(NRF)の会長兼最高経営責任者(CEO)のマシュー・シェイ氏は売上高が増加した背景について、物価水準の緩やかな上昇に加えて、賃金の上昇、労働市場が堅調に推移していることが寄与したと述べた。一方で、景気の先行きに対する不透明感が依然として漂う中、「消費者は現在の経済環境に対して慎重で、懸念を抱いている。小売業者は、コストに敏感な消費者が予算を伸ばせるように、競争力のある価格と利便性を提供し続けている」と指摘した。また、NRFのチーフエコノミスト、ジャック・クラインヘンズ氏は「消費者は選別的で価格に敏感になっているものの、年内を通じて支出は緩やかに増加する」と述べた上で、「信用状況が厳しくなり、余剰貯蓄が縮小(2023年1月10日付地域・分析レポート参照)していることをいち早く示している」と、両氏とも消費者の慎重姿勢が強まっている見方を示した。

一方、民間調査会社コンファレンスボードが4月25日に発表した4月の消費者信頼感指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは101.3と、3月(104.0)より2.7ポイント減少し、2022年7月以来(95.3)9カ月ぶりの低水準に落ち込んだ(添付資料図参照)。内訳をみると、現在の雇用環境や経済状況を示す現況指数は151.1(3月:148.9)で2.2ポイント増加した一方で、6カ月先の景況見通しを示す期待指数は68.1(3月:74.0)で5.9ポイント減少した。期待指数は、今後1年以内に景気後退を示唆する80を下回る水準で推移しており、依然として景気後退のリスクが高まっていることを示唆している。

コンファレンスボードの経済指標シニアディレクターであるアタマン・オジルディリム氏は「消費者は、景況と労働市場のいずれの見通しについて、より悲観的になった。先月と比べ、今後6カ月の間に景況が改善すると考える世帯が減り、悪化すると考える世帯が増えた」と述べた。同氏によると、4月の消費者信頼感の低下は、特に55歳以下の消費者と5万ドル以上の収入のある世帯の期待の悪化を反映しているとした。住宅、自動車、家電製品、旅行などの購入計画はいずれも後退しており、悲観的な見方が広がる中で消費者が節約に走っている可能性を示唆しているとも述べた。

(注)自動車・同部品、建材・園芸用品、フードサービス、ガソリンスタンドを除いた小売売上高。

(樫葉さくら)

(米国)

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