資源大手トタルが天然ガス開発再開に向け調査レポートとアクションプランを公開

(モザンビーク、フランス)

マプト発

2023年06月15日

フランス資源大手トタル・エナジーズは5月23日、モザンビークのカーボデルガード州の人道状況調査報告書と、状況評価に基づくアクションプランを発表した。カーボデルガード州では2017年10月以降、イスラム過激派の活動により治安が悪化しており、同社を筆頭とするコンソーシアムによる天然ガス開発プロジェクト(モザンビークLNG)は2021年4月以降停止している(2021年4月30日記事参照)。今回の人道状況調査は、プロジェクト再開へ向けた検討材料の1つとして実施されることが2023年2月に発表されていた(2023年2月16日記事参照)。報告書は、人道・人権の専門家であるジャン=クリストフ・ルフィン氏らによる調査を基に作成されたもの。同報告書に基づき、アクションプランも作成された。

報告書は、カーボデルガード州の治安情勢に起因する人道状況に触れつつ、モザンビークLNGが同州北部沿岸の地域開発のために実施している社会・経済活動、およびプロジェクトに伴う住民移転・補償対応の評価・課題抽出に焦点を当てている。社会・経済活動は、地域の農業・漁業セクター、中小企業、インフラを含む公的サービスに対する地元NGOなどを通した支援活動で、生計再建やテロ活動による破壊行為からの復興に主眼が置かれている。他方、南部アフリカ開発共同体(SADC)とルワンダによる軍事支援の効果により、北部沿岸地域の治安が比較的安定していることを踏まえ、将来的には復興から開発へと軸足を移すことを見据え、国際機関やNGOとより密接に連携することが提唱された。住民移転・補償への対応については、移転同意に向けた住民との合意プロセスの見直しや、保証金の早期支払いなどが提言として盛り込まれている。

報告書で示されたこれらの提言は、モザンビークLNGのアクションプランにも採用されている。同プランには、社会経済開発プログラムが、カーボデルガード州北部だけでなく、州全域に開発効果を波及させるために財団を設立すること、2023年内に再定住や補償金受け取りのための公的書類の準備を完了することなどが盛り込まれている。

(松永篤)

(モザンビーク、フランス)

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