バーデン・ビュルテンベルク州、「水素ロードマップ」進捗報告書を発表

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年05月17日

ドイツ南部のバーデン・ビュルテンベルク(BW)州政府は5月9日、同州が2020年12月に閣議決定した「水素ロードマップ」(2021年1月6日記事参照)の第1回進捗報告書を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同報告書は「水素ロードマップ」に基づいてBW州が水素供給の確保のために実施した措置の進歩や、今後の方向性・見通しをまとめたもの。

BW州は州の気候保護法で、温室効果ガス(GHG)排出量を2030年までに65%削減(1990年比)、気候中立(GHGの排出量実質ゼロ)はドイツ全体(2021年7月6日記事参照)より5年早い2040年までに達成する目標を掲げる。今回の進捗報告書発表に際して、ビンフリート・クレッチマンBW州首相は「(目標達成のため)電化できない分野には水素が必要になる」とした。

また、BW州の将来の水素需要について、国家水素評議会(Nationaler Wasserstoffrat、外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます注1)は2023年2月、2040年に州内エネルギー需要の約15%を水素で賄うと予測した。すなわち、2040年の州内エネルギー需要は197テラワット時(TWh)で、うち水素が30TWhとなる。BW州の水素プラットフォーム「H2BW外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は2022年1月、同州の水素需要が2020年の3.1TWhから2035年に16.6TWhまで拡大すると予測していた。

報告書は水素インフラ整備の必要性強調

進捗報告書は、需要増への対応には州外から水素を運搬・輸入するインフラ整備が必要としている。具体的には、既存の天然ガス導管網を活用した水素の供給、水素導管網の新設だ。BW州はグリーン水素(注2)またはアンモニアなどの水素派生製品の生産に適したスペイン・アンダルシア州、スコットランド、チリなどと協力関係を構築していることも挙げた。同報告書は、BW州が遅くとも2030年までにドイツ国内と欧州の水素導管網に接続できるとした。また、州内の水素インフラ整備に資する目的で、BW州環境・気候・エネルギー産業省、H2BW、BW州商工会議所(BWIHK)などが協力し、2023年4月から水素需要調査を開始したという。

同報告書は一方で、水素導管網が整うまでは、州内の水素需要を満たすべく、州内での水電解装置による水素製造も必要とした。加えて、BW州は燃料電池部品・システムの開発や生産で先進的な地域と指摘した。今後、水電解装置分野でも可能性が拡大、特に関連設備の製造や技術・部品の輸出は重要な産業に発展することが見込めるとした。

進捗報告書はまた、「水素ロードマップ」の導入により、州内の水素関連プロジェクトに対し、これまでに合計約5億ユーロが助成されたことにも触れた。

(注1)国家水素評議会は連邦政府の「国家水素戦略外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に基づいて設置された(2020年9月9日付地域・分析レポート参照)。産学の専門家25人で構成する諮問機関で、関連省庁の事務次官で構成する水素に関する委員会に勧告などを行うとともに、同戦略の進捗管理、監視と各省庁の支援を行う。

(注2)再生可能エネルギー由来の電力を利用し、水を電気分解して生成される水素。製造過程で二酸化炭素(CO2)を排出しない。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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