中国で進むICVタクシーの商業化

(中国)

上海発

2023年05月18日

中国自動車大手の広州汽車集団傘下の新エネルギー車(NEV)ブランドの広汽埃安新能源汽車有限公司(GAC AION)と、配車サービス大手の滴滴出行(DiDi Chuxing)傘下の滴滴自動運転会社は5月10日、2021年5月に戦略的業務提携を締結して以降初めて進捗状況を公表した。無人運転NEV量産プロジェクト「AIDI計画」(注1)を発表するとともに、合弁会社を設立すると述べた。「AIDI計画」では、シェアリングモビリティー向け、かつ無人運転が可能となるレベル4の自動運転NEVを中国で初めて量産するとした。この量産車は2025年に滴滴シェアリングモビリティーネットワークに導入され、全天候型の大規模な有人運転・無人運転混合配車サービスを実施予定だ。

また、上海市では、ICVタクシー(注2)の商業化が進んでいる。上海市では4月17日、百度智行、AutoX、賽可出行、大衆出租などの企業に対し、ICVタクシーの一般道路での試験的な商業運転実施の許可が出された(2023年5月17日記事参照)。ジェトロは、商業運転が開始されたエリアで、実際に百度智行と小馬智行による自動運転タクシーに乗車した。百度智行に乗車した際の状況を報告する。

【配車予約】

上海市内の自動運転運営エリアに行き、百度智行が運営する自動運転プラットフォーム「蘿卜快跑Luobo Kuaipao)」のwechatミニプログラムを利用し、乗車と降車場所を登録して配車を予約。予約から約15分で乗車地点に自動運転車が到着。

【乗車】

乗車する際に、予約時に登録した個人情報(電話番号の下4桁)を車両の側面に設置されているタッチパネルに入力する。車の扉が自動解錠され、乗車可能となる。乗車後に座席前のタッチパネル上の運転開始ボタンを押すと、運転が開始。運転は非常にスムーズで、通常の市内のタクシーとの違いは特段見られなかった。目的地到着後、電子決済によって自動的に支払いができた。

運転席に座っている乗務員に話を聞いたところ、着席しているのみで、特に何もしないと話した。また、法定速度を超えない設定となっており、安定した運行ができているという。現在は運賃割引が適用されるキャンペーン期間中ということから、非常に人気が高く、多い時間帯では30分から1時間待ちもあるという。

写真 ミニプログラムで配車予約(ジェトロ撮影)

ミニプログラムで配車予約(ジェトロ撮影)

写真 車解錠時(ジェトロ撮影)

車解錠時(ジェトロ撮影)

写真 運転開始時(ジェトロ撮影)

運転開始時(ジェトロ撮影)

写真 車全体(ジェトロ撮影)

車全体(ジェトロ撮影)

(注1)AIDI計画は、广汽埃安知能(GAC AION Intelligence)と滴滴自動運転知能(Di Di Intelligence)の技術を相互補完し、人工知能(Artificial Intelligence、AI)と運転知能(Driver Intelligence、DI)の融合を意味する。

(注2)ICVとは、Intelligent Connected Vehicleの略称で、AIや高度の通信技術を導入し、安全性や効率性の高い自動運転を可能とする自動車の総称。

(神野可奈子)

(中国)

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