江蘇省常熟市、公務員などの賃金をデジタル人民元で支給

(中国)

上海発

2023年05月10日

中国の江蘇省・常熟市地方金融監督管理局と常熟市財政局は4月20日、「賃金全額のデジタル人民元払いの実施に関する通知」を出し、常熟市の公務員、公的機関および国有企業職員への給与全額を5月からデジタル人民元で支給するとした(「上海証券報」4月22日)。

蘇州市(注1)では、デジタル人民元の普及に関する先行的な取り組みが実施されている。中国人民銀行は2020年4月から、江蘇省蘇州市を含む複数の都市や地域でデジタル人民元の実証実験を実施してきた(2022年4月11日記事参照)。また、蘇州市政府は2020年に、市民にデジタル人民元を配布する実証実験を行っている(2020年12月18日記事参照)。

江蘇省政府は2023年2月、「江蘇省デジタル人民元試験事業方案に関する通知」(以下、通知)を発表した。通知では、2025年末までにデジタル人民元の運営管理システムの基盤を整え、効率的なサービスを展開し、適用範囲を拡大させていくと述べている。また、通知では、実施段階として「パイロット準備段階(2023年1~3月)」(注2)、「普及開始段階(2023年4~12月)」(注3)、「増分拡大段階(2024年1月~2025年6月)」(注4)、「総括深化段階(2025年7~12月)」(注5)を示した。

また、蘇州市デジタル経済時代産業革新クラスター発展推進指導グループ弁公室は2022年12月、「蘇州市デジタル金融産業発展3カ年行動計画(2023~2025年)」(以下、計画)を発表した。計画では、2025年までに金融機関およびデジタル金融エコシステム企業を2,000社以上、金融業の年間税収を400億元以上(約7,600億円、1元=約19円)、デジタル金融実験室、デジタル金融イノベーションセンター、フィンテック企業あるいはソフトウエア開発テストセンターなどの数を80社以上にすることを主要目標としている。また、計画では、蘇州市を全国の中で高度なデジタル金融産業のイノベーション能力を持つ都市にさせ、デジタル金融イノベーションのベンチマークとなる都市を段階的に建設すると示した。

(注1)常熟市は、蘇州市の管轄下にある県級市。

(注2)全省的な作業計画を策定し、必要なシステム、人員などに関する準備を行う期間。

(注3)商業、民生、文化観光などの分野におけるデジタル人民元の普及を促進させる段階。

(注4)デジタル人民元の利用できる場面を拡大させ、全国の省の中で上位の取引規模を目指す段階。

(注5)デジタル人民元を完全に普及させ、より包括的なデジタル人民元エコシステムの基礎を形成する段階。

(尹世花)

(中国)

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