中国人民銀行、デジタル人民元の実証実験対象地域を拡大

(中国)

中国北アジア課

2022年04月11日

中国人民銀行(中央銀行)は3月31日、「デジタル人民元研究開発実証実験業務座談会」を開催し、デジタル人民元の実証実験の状況を総括するとともに、今後の取り組み方針を固めた。座談会では、デジタル人民元が、卸売り・小売り、飲食、交通や行政サービスなどの決済に実際に使用されており、複製可能でかつ推進可能な応用モデルとなっていること、2022年2~3月における北京冬季オリンピック・パラリンピックにおける実証実験が成功を収めたことなどが報告された。

そのうえで、天津市、重慶市、広東省広州市、福建省福州市、福建省アモイ市および、浙江省内のアジア競技大会会場が設置される6都市(注1)を新たに実証実験対象地域に追加した。加えて、冬季オリンピック・パラリンピック会場での実証実験を踏まえ、北京市、河北省張家口市も対象地域とした。

中国人民銀行は2020年4月から、広東省深セン市、江蘇省蘇州市、河北省雄安新区、四川省成都市の4都市・地域でデジタル人民元の実証実験を行ってきた(2020年12月18日記事参照)。さらに、2020年11月には海南省、上海市、湖南省長沙市、陝西省西安市、山東省青島市、遼寧省大連市の6省市と、北京市と河北省張家口市の冬季オリンピック・パラリンピック会場を対象地域に追加していた。そのほか、デジタル人民元アプリ(パイロット版)の提供が2022年1月4日に開始されている(2022年1月14日記事参照)。

中国では、支付宝(Alipay)や微信支付(WeChat Pay)など民間企業の電子決済サービスの普及が進んでいるが、中国人民銀行の発表では、2021年12月末時点で、2億6,000万のデジタル人民元個人口座が開設、取引金額は875億元(約1兆6,625億円、1元=約19円)に達している(注2)。

中国人民銀行デジタル貨幣研究所の呂遠総経理は「デジタル人民元は法定通貨で、安全な資産だ。匿名性を担保することができ、プライバシー保護や個人情報の安全性の確保にも資する。われわれは、各種の支払い方式が調和のとれたかたちで発展し、デジタル人民元と既存の電子決済ツールの長期的併存を支持している」と説明している。

(注1)浙江省において、2022年9月に第19回アジア競技大会の開催が予定されている。浙江省杭州市がメイン会場となり、寧波市、温州市、金華市、紹興市、湖州市にも競技会場が設置される。

(注2)中国人民銀行はデジタル人民元について、2021年6月末時点で 2,087万の個人口座が開設され、取引金額は約345億元に達したと発表している。

(亀山達也)

(中国)

ビジネス短信 9c4f2cc075b5dc6f