ハンガリー政府、2023年のGDP成長率予測を1.5%に下方修正

(ハンガリー)

ブダペスト発

2023年05月10日

ハンガリー政府は5月2日、欧州委員会に対し2023年版の「収斂(しゅうれん)プログラム」(注)を提出した(政府プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。収斂プログラムでは、2023年の実質GDP成長率を1.5%、2024年を4.0%とした(添付資料表参照)。成長率1.5%は2022年12月発表の政府経済予測と同じだが、2022年の収斂プログラム(2022年5月11日記事参照)の4.3%との予測からは大幅な下方修正だ。

収斂プログラムでは主な景気阻害要因として、エネルギー・原材料市場の不安定さ、高インフレ抑制のための世界各国の金融政策(高金利など)、EU資金へのアクセスの遅れ、内陸国としてのエネルギー多様化への課題などを挙げている。一方、2023年は輸出が成長を牽引し、2023年後半からは消費と投資が再び拡大に転ずることが期待されている。

実質GDP成長率を需要項目別にみると、個人消費支出は、2022年後半からのインフレの急伸によって落ち込み、さらに2023年は2022年からの物価高止まりと実質賃金の下落が下押し要因となる。その結果、2023年の個人消費支出は、一部の食品の価格キャップなど政府の措置があるものの、前年比で0.1%減となり、2024年から増加に転じると予測した。

総固定資本形成は、2023年は4.8%減との予測だ。主に公共投資の減速により抑制されるとともに、企業による投資も資金調達コストの上昇により後退している。他方で、外国企業による車載用蓄電池を中心とした大規模な投資や、政府のエネルギー効率化支援策が投資の持続に寄与し、2024年は3.7%増と予測している。

消費者物価指数(CPI)上昇率については、収斂プログラムは上述の2022年末の政府経済見通しの2023年は15%という予測を維持した。ただし、ハンガリー国立銀行(中央銀行、MNB)は17.2%(2023年3月発表)、エコノミストの市場予測では18~19%(「ポートフォリオ」紙5月2日)と、もう一段高めの予測だ。収斂プログラムは、2023年末にはCPI上昇率が1桁台に落ち着き、2024年には6.0%まで低下、その後はMNBの設定許容範囲(3%かつ上下1ポイント幅)の3.0%で横ばいと予測している。

労働市場に関しては、ハンガリーの失業率は新型コロナウイルス感染拡大の時期でも5%を超えなかったこと、ウクライナ戦争やエネルギー危機などの困難もうまく切り抜けたことが強調されている。大企業を中心に旺盛な労働需要が続くため、2023年の失業率はわずかな悪化(2022年の3.6%から2023年に3.9%に上昇)にとどまる見込みで、2024年から再び改善し、2027年には3%を下回ることも予想されるとしている。

財政赤字は、2024年にGDP比2.9%、2025年に1.9%まで縮小するとみている。2023年政府予算には、高い雇用率の維持、低い家庭用エネルギー価格の維持、年金の実質価値の維持、家族手当の継続、政府債務残高のGDP比率の一層の低減という5つの優先目標が設定されている。

(注)EUでは、加盟国の過剰な財政赤字を回避し、財政規律を確保するための「安定・成長協定(SGP)」において、各加盟国は毎年4月末までに中期財政目標を含む「安定化プログラム(ユーロ圏)/収斂(しゅうれん)プログラム(非ユーロ圏)」を策定し、欧州委に提出する必要がある。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー)

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