バイデン米大統領、マッカーシー下院議長らと債務上限問題について3回目の会談、結論持ち越しも歩み寄りの姿勢示す

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月17日

米国のジョー・バイデン大統領は5月16日、連邦議会下院のケビン・マッカーシー議長(共和党、カリフォルニア州)らと、懸案となっている債務上限問題への対応に関する協議を行った。同協議は、5月9日に続いて今回で3回目となる。当初は12日に予定されていたが(2023年5月10日記事参照)、まずはスタッフ間の協議を続けるとの事情で16日に延期になっていた。

財務省は、早ければ6月1日にも米国債などが債務不履行に陥ると警告しており(2023年5月2日記事参照)、前日の5月15日にも、最新の情報を反映した結果としてやはり、6月1日にも債務不履行に陥る可能性があり議会に対して速やかな対応を求める、とした書簡外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを上下両院の共和・民主両党リーダー4人にあらためて送付した中で行われた協議だった。会合後、両者ともに前向きなコメントがあり、多少の進展があったもようだ。

会合後に報道陣に答えたマッカーシー議長は「両者には依然大きな隔たりはあるが、今週末までに合意に至ることは可能であり、それほど難しくはない」と述べ(ロイター5月16日)、悲観的なコメントだった前回協議と違なり、前向きな姿勢を示した。バイデン大統領も「双方が求めるもの全てを得ることが難しいことを認識すれば、超党派の予算合意に至る道は開ける」との声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしており、両者に歩み寄りがみられた。今後、スタッフ間で協議を続け、5月19日に広島で開かれるG7サミットへのバイデン大統領の参加後に再度協議するとしている。

なお、G7への参加に関しては、債務上限問題の協議を優先して、バイデン大統領はオンライン参加となるとの可能性も取り沙汰されていたが、当初の予定どおり対面参加する。ただし、訪日後に予定していたオーストラリアとパプアニューギニア訪問を中止する見込みだという(ブルームバーグ5月16日)。

債務不履行の時期は、足元で入ってくる税収などの動向に左右されるため、財務省は5月15日の書簡の中で、来週、あらためて債務不履行についての最新情報を議会に提示するとしている。一方で、仮に債務不履行に具体的に陥る日までに議会で上限が引き上げられなかった場合、ジャネット・イエレン財務長官は「大統領は何らかの決断を求められるだろう」と述べており、さまざまな代替手段が議論されている。

合衆国憲法の修正第14条「公的債務の有効性は問われてはならない」とする文言の解釈を用いて、連邦政府は議会の同意なしに債務上限を引き上げるという方法も議論されているほか、米国債などの支払いを最優先し、社会保障や人件費、国防などの支出は劣後させるという方法も取り沙汰されている(ブルームバーグ5月11日)。しかし、この場合、市場の混乱はある程度抑えられるが、国民生活への影響は甚大で、こうした事態を招いた共和・民主両党や政権が批判の的となることは必至だ。共和・民主両党や政権がどちらも歩み寄りはうかがえるも強硬な姿勢を続ける中、市場や国民生活への実際の影響も現実味を帯びてきており、どこで互いの主張を下ろすことができるか、注目される。

(宮野慶太)

(米国)

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