バイデン米大統領、債務上限問題でマッカーシー下院議長らと2回目の会談、具体的な進展みられず

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月10日

米国のジョー・バイデン大統領は5月9日、連邦議会下院のケビン・マッカーシー議長(共和党、カリフォルニア州)らと、懸案となっている債務上限問題への対応に関する協議を行った。この件に関するバイデン大統領とマッカーシー議長の会談は2月(2023年2月2日記事参照)に続いて2回目となる。財務省は、早ければ6月1日にも米国債などが債務不履行に陥ると警告しているが(2023年5月2日記事参照)、今回の協議でも具体的進展はなかったもようだ。

会合は1時間程度行われ、会合後に報道陣の取材に応じたマッカーシー議長は「新しい動きはなかった」と述べた。共和党側は、4月に下院で可決した独自の歳出削減法案(2023年4月27日記事参照)を基に、債務上限引き上げの条件として厳しい歳出削減の確約を要求したものとみられる。他方、バイデン大統領を含む民主党側は予算の修正協議には応じるものの、債務上限については従来どおり無条件での引き上げを主張したものとみられる。報道によると、両者は12日に再び協議を行う予定だ(ブルームバーグ5月9日)。

難航する債務上限引き上げに関する協議だが、最近では打開策として、合衆国憲法の修正第14条「公的債務の有効性は問われてはならない」とする文言の解釈を用いて、連邦政府は議会の同意なしに債務上限を引き上げられるとする主張も取り沙汰されている。しかし、債務上限がこれまで何度も議会で引き上げられてきた経緯などを踏まえ、反対意見も多い。もしこれが実行された場合、法廷闘争などに発展し、時間的コストが発生するのは必至だ。ジャネット・イエレン財務長官は「(修正第14条の発動は)憲法上の危機を招く。(議会による債務上限の引き上げ以外に)良い選択肢はない」と述べ、否定的な姿勢を見せている。一方、バイデン大統領は「まだその考えには至っていない」として、含みを残している(ブルームバーグ5月7日)。協議の長期化を見越して、9月ごろまでの資金需要に対応するためとし、債務上限を小幅に引き上げる案も取り沙汰されているが、バイデン大統領もマッカーシー議長もこれを否定したとされており(ブルームバーグ5月9日)、解決の糸口はまだ見えていない。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 3e860a11ec2b225b