マレーシア中銀、政策金利3%に、事前予測を覆し3会合ぶり利上げ

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年05月08日

マレーシア中央銀行は5月3日の金融政策会合(MPC)で、政策金利を0.25ポイント引き上げ3%とすることを決定した(中央銀行プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。利上げは3会合ぶり。中銀は、4年ぶりに金利を引き上げた2022年5月以降、4回連続で金融引き締めに動いたが(2022年11月4日記事参照)、11月のMPCを最後に据え置いていた。中銀はプレスリリースの中で、国内の失業率の低下が続き消費が堅調に推移する中、コアインフレが高止まりしていることを理由に利上げを決定したと説明した。

他方、ロイターが4月24~27日に実施した事前調査では、インフレが落ち着いており、中銀の年間インフレ目標である2~3%の上限に近づいていることから、エコノミスト25人のうち8割に当たる21人が金利据え置きを予想していた。マレーシアの消費者物価指数は、2022年8月に4.7%に到達した後は低下を続け、2023年3月には3.4%となった。

中銀は世界経済について、労働市場の堅調さに支えられた内需と、予想を上回る中国経済の回復が牽引していると分析。ただしインフレには留意が必要で、総合インフレは低下しつつあるものの、コスト上昇圧力や金利上昇によりコアインフレは過去の平均を上回っていると指摘。多くの中銀において、金融政策は引き続き引き締めのスタンスを維持すると見通した。今後の経済成長見通しも、主に地政学的緊張の高まり、インフレ率の予想を超える上昇、金融市場環境の引き締めなどから、下振れリスクにさらされ続けていると分析した。

マレーシア経済については、好調だった2022年に引き続き、2023年第1四半期の経済活動が、特に内需に牽引され、さらに成長すると見込んだ。失業率がパンデミック前の水準まで低下し続けているため、家計支出は底堅く推移。観光活動の回復継続や、複数年にわたるインフラプロジェクトの進展とこれによる投資活動の活性化にも期待を示した。他方で、世界経済の成長率が予想を下回る可能性や金融市場の不安定性が下振れリスクになり得ると指摘した。インフレ率については、2023年中は平均2.8~3.8%にとどまるとしつつも、需要が堅調に推移する中、コアインフレ率は高水準を維持するとも予測した。燃料補助金や価格統制メカニズムが、インフレ上昇圧力の抑制に一部奏功しているとも述べた。

先述とは別のロイターによる調査において、22人のエコノミストの中位予想では、中銀は少なくとも2023年末まで金利2.75%を維持するとしていたが、うち9人は年内に1回以上、利上げする可能性を示唆していた。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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