バイエルン州、州のハイテク戦略をさらに強化

(ドイツ)

ミュンヘン発

2023年05月10日

ドイツのバイエルン州政府は4月26日、2019年10月に発表した同州の「ハイテク・アジェンダ」プログラムを2027年まで延長すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同日に開催されたバイエルン州議会において、マルクス・ブルーメ州科学・芸術相が施政方針演説を行い、「ハイテク・アジェンダ」のこれまでの実績と当面の具体的な計画を説明、プログラム延長も併せて発表した。延長により、関連分野の予算は、これまでに確保した35億ユーロに20億ユーロが追加されることになる。

ハイテク・アジェンダ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」は、バイエルン州が他国に負けない技術基盤を整備すべく、人工知能(AI)の分野に特に注力し、教授・教員を新たに約1,000人雇用するほか、州内大学のAI関連講義、情報学専攻の学生の増加を図る。また、量子コンピュータ、航空宇宙、合成燃料、蓄電池、水素など、次世代技術の振興も目指している(2020年9月24日記事参照)。

ブルーメ州科学・芸術相は今回の演説で、特にAI、ロボット、スーパーコンピュータ、航空・宇宙の分野に力を入れていることを強調した。

また同相は、「ハイテク・アジェンダ」での、教授・教員を新たに約1,000人雇用する目標については、既に62.4%のポストへの教授・教員の就任が決定、21.1%のポストが調整中との状況を説明した。学生数についても、2019年冬学期以降、AI、情報、情報関連学部の学生数が9,200人増加した。ミュンヘン工科大学航空宇宙工学・測地学部の学生数も倍増させ、1,590人になった。今後は2030年までに3,000~4,000人規模となり、航空宇宙工学の学部では欧州最大規模となる見込み。州内の大学や教授・教員陣の国際化も進んでおり、これまでに雇用が決定した教授・教員の約2割がドイツ国外からの招聘(しょうへい)で、情報学部では約4万人の学生のうち、留学生が約4分の1を占めるという。

「ハイテク・アジェンダ」では、大学発スタートアップの創出も目指している。バイエルン州は、大学が所在する地域で起業支援を行う「創業ハブ(Gründungs-Hubs)」の設置を進めている。ブルーメ州科学・芸術相は過去の好事例として、ミュンヘン大学とミュンヘン工科大学が1998年に設立した「デジタル技術・経営センター(CDTM)」を挙げた。設立以降、260を超えるスタートアップが創業、その中には、ソフトウエア開発のセロニス(Celonis)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、空飛ぶクルマのリリウム(Lilium)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどのユニコーン企業も含まれる。また同相は、ドイツ科学助成財団連盟の2022年調査で、州内2大学が高評価を獲得したこと(2023年3月1日記事参照)にも言及、起業環境の整備が進んだことを強調した。

ブルーメ州科学・芸術相は演説の中で、米国アップルが欧州イノベーションセンターをミュンヘンに設立すること、BMWがバイエルン州東部地域に蓄電池工場の新設を決定したこと(2023年3月28日記事参照)にも言及、投資先としての州の優位性が評価されている証左とした。アップルは2023年3月、ミュンヘンに約10億ユーロの追加投資をすると発表している(2023年3月6日記事参照)。

(クラウディア・フェンデル、高塚一)

(ドイツ)

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