米ファースト・リパブリック銀行へ300億ドルの支援、中堅銀行への規制強化案も浮上

(米国)

ニューヨーク発

2023年03月17日

米国ファースト・リパブリック銀行は3月16日、バンク・オブ・アメリカ、シティグループ、JP・モルガン・チェース、ウェルズ・ファーゴなど11行から合計300億ドルの保険対象外の預金を受け取ったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同行の総資産は2022年12月時点で2,126億ドルと全米14位になっている。同行では、シリコンバレー銀行(SVB)などの破綻を受けて信用不安が生じており(2023年3月14日記事参照)、米国大手銀行が救済のための資金注入を行ったかたちだ。内訳は、上述の4行が各50億ドルの計200億ドル、ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーが25億ドルずつ、そのほか5行が10億ドルずつとなっている。

バイデン政権はSVBなどの預金を全額保護する方針を発表し、他の金融機関への信用不安波及防止を図ったにもかかわらず、ファースト・リパブリック銀行からは預金の流出が相次いだほか、同行の株価は3月13日に前営業日比約60%急落していた。株価はその後いったん持ち直したものの、欧州でのクレディ・スイス銀行の経営不安発生も加わり、16日朝の株価は前日比約30%急落した。こうした状況を受けて、ファースト・リパブリック銀行の事業売却が模索されているとの米国メディア報道もあったが(ブルームバーグ3月15日)、事業売却は行われず、今回他行からの巨額の預金による財務支援が行われた。特に信用不安が生じている中堅銀行から大手銀行への預金移動によって、バンク・オブ・アメリカはここ数日で150億ドル超の預金増加があったとしており(ブルームバーグ3月15日)、こうした預金増も今回の大手銀行の支援につながったとみられる。支援発表を受けて、ファースト・リパブリック銀行の16日の株価終値は結果的に前日比約10%上昇した。財務省や米国連邦預金保険公社(FDIC)などは今回支援について「銀行システムの回復力を示すもの」として歓迎する共同声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

米国金融機関の信用不安は予断を許さない状況が続くが、ここにきて信用不安が生じた中堅銀行への規制を強化する動きもある。「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版(3月14日)によると、関係者の話として、金融機関の財務の健全性を連邦準備制度理事会(FRB)が年1回審査する財務健全性審査(ストレステスト)(2022年6月27日記事参照)の対象範囲が拡大される可能性があるとしている。米国では、総資産2,500億ドル以上の金融機関に対して、自己資本要件や厳格なストレステストの実施などの規制が科されているが、経営破綻したシリコンバレー銀行やシグネチャー銀行、また、財務支援を受けるファースト・リパブリック銀行はいずれも総資産2,500億ドルに満たず、FRBが2022年に公表したストレステストの対象からは外れていた。同紙によれば、ストレステストの対象を総資産1,000億ドル以上に引き下げる可能性があるとしている。そのほか、今回の破綻や信用不安では預金の引き出しの急増による流動性の不足が一因となっているが、16日に議会証言したジャネット・イエレン財務長官は「ストレステストは流動性ではなく、資本の確保に焦点をあてている」と話しているとおり(ロイター3月16日)、流動性確保も論点の1つになる可能性がある。規制見直し案は、FRBにより5月1日までに公表される予定だ(2023年3月14日記事参照)。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 21787a0a498085e8