自由貿易試験区、対外開放促進のための役割が拡大

(中国)

中国北アジア課

2023年05月29日

中国商務部は5月11日の定例記者会見で、2023年第1四半期(1~3月)における自由貿易試験区の輸出入総額が前年同期比6.6%増の1兆8,000億元(約36兆円、1元=約20円)だったと発表した。外資利用額(実行ベース)は22.1%増の719億元で、自由貿易試験区を有する省・自治区・直轄市の総額の18.1%を占めた。

商務部の束珏婷報道官は会見で、自由貿易試験区が貿易と投資を促進するために取り組んだこととして、「制度革新」「重点産業の発展の促進」「的確なサービスの提供」「円滑な物流ルートの構築」の4つの分野を挙げた。「制度革新」では、広東自由貿易試験区の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定原産地証明のペーパーレス申請の受け付けなど、貿易と投資の利便性向上のための取り組みを行っていると述べた。「重点産業の発展の促進」では、上海自由貿易試験区の「グローバル・オペレーター・プログラム(注)」など、競争力のある産業を育成し、外向型の産業の発展を促進する取り組みについて言及した。「的確なサービスの提供」では、多くの自由貿易試験区が外資系企業のホワイトリストを設けていることを例として挙げた。「円滑な物流ルートの構築」では、上海市と安徽省の自由貿易試験区における貿易通関の時間を短縮するための取り組みについて言及し、国際物流の積極的な能力強化を図ると述べた。

2023年は上海で自由貿易区が初めて建設されてから10年がたつ節目の年だ(2013年7月18日記事参照)。約10年間、自由貿易区が果たしてきた役割について、商務部の王文涛部長は「初めての取り組みが行われ、画期的な成果を挙げ、改革開放の革新の成果を全国に広めた。改革開放の実験場としての役割を発揮してきた」と述べている。

習近平総書記(国家主席)は2022年10月の中国共産党第20回全国代表大会での報告(2022年10月18日記事参照)で、レベルの高い対外開放を推進するため、「自由貿易試験区の能力強化戦略」を実施しなければならないと述べている。同戦略の目的について、王部長は「国際基準に照らして試験的に制度開放を推進し、改革開放の実験場としての役割を発揮し、改革の深化と開放の拡大に向けた新たな道筋を示していくことにある」と述べている。実際に、広西チワン族自治区人民政府は2023年2月13日、「中国(広西)自由貿易試験区の改革開放をより深化する計画」を策定した。同計画では、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)との適応性の向上や、RCEP協定の実施水準の向上など、国際的な経済貿易規則に基づく制度構築を行うと述べられている。

(注)グローバル・オペレーター・プログラムとは、貿易や投資、物流、研究開発のいずれかの業務をグローバルに展開する企業を育成する長期インキュベーションプログラムで、上海自由貿易試験区が主導している。

(廣田瑞生)

(中国)

ビジネス短信 abcda6fca1cdfafe