APEC貿易担当相会合、共同声明の採択には至らずも一定の成果

(米国、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、台湾、タイ、ベトナム)

ニューヨーク発

2023年05月31日

米国ミシガン州デトロイトで5月25~26日に開催されたAPEC貿易担当相会合では、21の参加国・地域による共同声明を採択できず、代わりに議長声明が公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますされた。2022年5月にタイで開催された貿易担当相会合に続き、共同声明が採択できなかったことになる(2022年5月31日記事参照)。ただし、議長声明では具体的な合意形成がされるなど、一定の成果もみられた。

議長を務めた米国のキャサリン・タイ通商代表部(USTR)代表は会合後の記者会見で、2023年のAPECのテーマ「すべてにとって強靭(きょうじん)で持続可能な未来の創造」の下、参加国・地域間で共有する課題である、脆弱(ぜいじゃく)なサプライチェーン、拡大する不平等、悪化する気候危機などを中心に議論を行った、と述べた。また、それらの課題に効果的に対処するために、第12回WTO閣僚会議の成果をいかに前進させ、同機関の改革を支えていくかについて前向きな議論を行ったとした(2022年6月20日記事参照)。議長声明には、それらの成果が散りばめられている。一方で、議長声明には、共同声明が採択できなかった理由として、ロシアによるウクライナ侵攻を非難し、ウクライナ領土からの完全かつ無条件の撤退などを求めた条項について、ロシアと中国から賛同を得られなかったことが記載されている。それ以外の条項は、全加盟国・地域が賛同した。2023年11月にサンフランシスコで予定されるAPEC首脳会合で共同声明が採択できるかについて、タイ代表は可能だとし、それに向けて参加国・地域で取り組んでいくとした。

このほか議長声明では、包摂的で持続可能な成長を推進する上でのデジタル技術・イノベーションの重要性および、サービス貿易の重要性に鑑み、2つの付属書が含まれた。1つ目の付属書は「APEC地域における電子インボイス発行システム相互運用性のための原則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」だ。加盟国・地域に、電子インボイスに紙のインボイスと同じ法的効果を与えることや、電子インボイスに関する措置を国際的な開かれた標準・ガイドライン・推奨に基づいて行うことなどを奨励する内容となっている。2つ目の付属書は「海洋ごみ清掃をサポートするサービスに関するAPEC非拘束ガイドライン外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」だ。加盟国・地域に、関連サービスに関して、障壁の削減や透明性などが確保された良い規制慣行の導入、規制の見直しや官民連携を通じた市場開拓など11のガイドラインを実行に移すよう奨励している。共同声明の採択には至らなかったものの、これら具体的な合意を形成できたことで、一定の成果があったとみられる。11月の首脳会合での議論の進展に期待がかかる。

(磯部真一)

(米国、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、台湾、タイ、ベトナム)

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