大幅な歳出削減なしに債務上限を引き上げるべきでないと半数超が回答、米世論調査

(米国)

米州課

2023年05月17日

米国では、議会が債務の上限を引き上げる、あるいは上限の適用を停止しなければ6月1日にも債務不履行に陥る恐れがあるといわれている(2023年5月2日記事参照)。これに関し、最近の世論調査では、大幅な歳出削減なしの債務上限引き上げに米国民の半数超が反対していることがわかった。

ロイターと調査会社イプソスは5月16日、債務上限に関する世論調査結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注1)を発表した。それによれば、「大幅な歳出削減なしに債務上限を引き上げるべきでない」と51%が回答した。

なお、エコノミストは、債務不履行によるデフォルトは、世界の金融市場を混乱させ、米国を景気後退に陥れるだろうと述べている。世論調査においても、デフォルトになれば「一般家庭に経済的な負担がかかるため、両者は合意に達しなければならない」と76%が回答した。支持政党別でみても、民主党支持者で84%、共和党支持者で77%といずれも多数だった。

経済誌「エコノミスト」と調査会社ユーガブが4~5月に実施した世論調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注2)では、債務上限が引き上げられず、米国が債務不履行に陥ることを、「重要な問題であるが危機ではない」とする回答は39%、「危機である」は32%だった。大多数が少なくとも重要な問題として認識している。「些細な問題」とする回答は11%だった。

また、債務上限対策として、「扶養家族のいない健常者がメディケイドを受けるために働くことを義務付ける」を支持する割合は60%、「石油、天然ガス、石炭の国内生産を増やす」では54%、「学生ローンを利用したほぼ全ての債務者に対し、1万ドルから2万ドルの学生ローン債務を帳消しにする」では50%と、半数以上の支持を集めた。

ジャネット・イエレン財務長官は5月16日に、コミュニティバンカーの集まりで、債務不履行が発生すれば、数百万人の米国人が所得を得られず、多くの米国の雇用や企業を破壊する景気後退の引き金となる可能性があると警告した(ロイター5月16日)。

なお、バイデン大統領とマッカーシー議長は債務上限問題について5月16日に協議し、多少の進展がみられたもようだ(2023年5月17日記事参照)。

(注1)実施時期は2023年月5月9~15日。対象者は全米の成人4,415人。

(注2)実施時期は2023年4月29日~5月2日。対象者は全米の成人1,500人。

(松岡智恵子)

(米国)

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