メキシコ市国際空港での貨物専用便の発着禁止を計画、航空業界は反発

(メキシコ)

メキシコ発

2023年01月24日

メキシコ政府は117日、パブリックコメント公募のため、国家規制改善委員会(CONAMER)のウェブサイトに政令案を掲載した。同政令案は、メキシコ市国際空港(AICM)の混雑緩和を図るため、同空港で貨物専用便を運航する企業に対し、90日以内に他空港への移転を命じる内容だ。インフラ通信運輸省は202233日、連邦官報でAICMの飽和(注)を宣言し、関連当局に対応を促していたが、その後も抜本的な混雑解消には至っていない。ここ数日のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領の記者会見での発言から、同政令の狙いは、大統領の肝いりプロジェクトの1つとして建設し、2022321日に開港したフェリペ・アンヘレス国際空港(AIFA2022年3月23日記事参照)の利用拡大とみられる。連邦民間航空庁(AFAC)によると、AIFAは開港から8カ月を経過した同年11月時点でも、国内線は14ルートで月間延べ1,676便の発着、国際線は2ルートで延べ58便の発着しかなく、AICMのそれぞれ12分の183分の1にすぎない。

全国航空輸送会議所(CANAERO)は今回の政令案に強く反発している。CANAERO118日付ツイッターで声明を出し、深刻な経済的損害を懸念している。AIFA周辺の道路・鉄道インフラが未整備であることや、現時点で生鮮品を扱うコールドチェーンのインフラがないこと、通関代理店や倉庫、ロジスティクス関連企業の集積がないことなどから、90日間で移転を実現するのは不可能で、最低360日は必要としている。また、貨物専用便と旅客・貨物混合便の双方を利用している物流関連業者にとっては、今後、AICMAIFAの双方にスタッフを配置する必要が生じてコストアップにつながるほか、両空港間の貨物輸送も必要となり、交通渋滞がより深刻化すると指摘する。さらに、米国連邦航空局(FAA)が20215月にメキシコの航空安全性評価をカテゴリー2に格下げし、現時点でもカテゴリー1への復帰が実現していないため、メキシコの航空会社は米国との間で新たな航路の設定や増便が認められていない。メキシコの航空会社が米国との間の貨物便をAICMからAIFAに移した場合、新たな航路設定と判断され、就航が認められないリスクもあるとし、利用空港変更は外国の航空会社にのみ利するとCANAEROは懸念している。

外国エアラインのカボタージュ認める法改正も

AMLO大統領は20221215日、民間航空法と空港法の改正案を国会に提出した。改正案は、外国の航空会社にメキシコ国内の2地点間の旅客と貨物の輸送(カボタージュ)を認める内容。改正の目的も、AIFAの活用を進めない国内航空会社に対して政治的圧力をかけることだと指摘する識者が多い。日本も含めた多くの国がカボタージュ規制を維持する中での自由化は、外国の航空会社に対してメキシコの航空会社を極端に不利な立場に陥れ、航空業界で働く多くの雇用を危険にさらすとCANAEROは指摘しており、政策立案に際して産業界との対話を重視することを連邦政府に強く訴えている(CANAEROツイッター20221216日)。

(注)ターミナル1は午前5時~午後1059分、ターミナル2は午前6時~午後759分と午後9時~午後1059分の時間帯は、両ターミナルの許容量を超える旅客が利用しているとしている。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

ビジネス短信 204c90fc2da48257