生産年齢人口の減少でGDP成長率低下を予想

(韓国)

中国北アジア課

2023年05月19日

韓国の全国経済人連合会(全経連、日本の経団連に相当)傘下の韓国経済研究院は5月18日、生産年齢人口(注1)と実質GDP成長率の相関性について研究結果を発表した。研究では、人口構造の変化と実質GDP成長率の相関性について、OECD加盟国のパネルデータを用いて分析した。研究の結果、生産年齢人口が1%減少すると実質GDP成長率が0.59%低下し、被扶養者(注2)が1%増加すると実質GDP成長率が0.17%低下することが分かった。報告書では、韓国の少子高齢化による人口構造変化は、経済に悪影響を及ぼすおそれがあると懸念を示した。

韓国の少子化問題は深刻だ。2022年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の数、暫定値)は0.78と、1970年以降で最低となり、OECD加盟国の中でも最下位だった(2023年5月15日付地域・分析レポート参照)。国連の「世界人口推計2022年版(World Population Prospects 2022)」によると、韓国の2050年の総人口は4,577万1,000人になると予測されており、2022年の総人口5,181万6,000人に対し、11.67%減少する。その中でも、2050年の生産年齢人口は2,398万4,000人と、2022年の生産年齢人口3,675万7,000人に対し、34.75%減少する。しかし、2050年の被扶養者は2,178万7,000人と、2022年の1,505万9,000人に対し、44.67%も増加することが予測されている。少子高齢化の影響により、人口ピラミッドも高齢層の比率が高い逆ピラミッド型になる。

分析の結果、韓国の2050年の実質GDPは2022年比で28.38%減少すると推計された。全経連のユ・ジンソン専任研究委員は「経済の中枢を担う生産年齢人口の減少と被扶養者数の増加による財政負担の増加、未来投資の減少など、経済活力が低下している。これによりGDPに否定的な影響を与えている」と述べた。

報告書では、人口構造変化に伴う経済への打撃を緩和するため、労働規制の緩和や、外国人労働者の雇用拡大、女性の経済活動参加率の向上、高齢層の雇用拡大など、多角的な政策を模索する必要があると主張した。

(注1)生産活動の中心にいる人口層のことで、15歳以上65歳未満の人口が該当する。韓国の生産年齢人口は2019年の3,637万2,000人がピークで、以降は減少傾向が続いている。

(注2)韓国で被扶養者として認定されるには、主として被保険者の収入によって生計を維持していることが必須。認定対象者の年間収入が3,400万ウォン(約340万円、1ウォン=約0.1円)未満であること。認定対象者が申請者の兄弟姉妹の場合は30歳未満もしくは65歳以上、その他、障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合等が該当。

(益森有祐実)

(韓国)

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